8話~十月桜~

「……。」

やっぱり寝れない。何度も寝ようって思ってみたけど目が冴えてる。

今日1日で色々なことが起きすぎだよ……。

私は夜風に当たろうとして外に出た。

「あ、茶々殿。」

「えっと……たしか……」

「ふふ、神楽弥禄です。弥禄って呼んでください。」

「弥禄殿。こんな夜遅くまで見張りを?」

「そうです。王雅様の命令なので。」

私は弥禄殿の横に座って会話をし始めた。

「茶々殿はこの国の仕組みはご存知ですか?」

「いえ……」

「そうですか。ならご説明させて頂きます。」

それから私は弥禄殿に色々と教えてもらった。

この鬼の国は秋の国の裏側にあり、昔から鬼と人と支え合って両国は発展していったらしい。

それと秋の国の三大武士の力は鬼の国の剣豪2人分に当たるらしい。それと鬼の国では農作物が取れにくい。だからよく秋の国の人が鬼に農作物の作り方や飢饉の備え方について教えているらしい。

「そうなんですね。」

「はい。よかったら明日鬼の国を視察に行きませんか?」

「え?」

突然の誘いに私は驚いた。返答に困っていると……

「弥禄。俺は茶々と明日出かけるから空いてないんだ。」

と桐崎様が現れた。

「相変わらず茶々殿に執着してるな〜。じゃあまたね茶々殿。」

と弥禄殿が笑ってそう言った。

弥禄殿の笑顔とても可愛らしいなと私は思った。

「はい。」

私は弥禄殿に一礼した。

「茶々、おいで。」

と私は桐崎様に腕を引っ張られ桐崎様の腕のなかに閉じ込められた。

「あの……!桐崎様!」

「……王雅。」

「え?」

「王雅とこれから呼べ。」

「わ、わかりました。」

私はどきどきして王雅様の顔を見れなかった。時間がとまったような感じだった。

なんでだろう。初めて抱きしめられたのになぜかこの腕のなかに戻れてうれしいだなんて……。

「あれ、王雅様。桜のいい匂いがします。」

とてもいい香り。だけど鬼の国は秋の国と一緒で気候は秋なのに……。

「茶々。顔を上げてあそこを見よ。」

「あ……!」

そこには桜の木があった。

王雅様は私を桜の木の近くまで案内してくれた。

月夜に照らされていて散る花びらも綺麗だ。

「そなたは綺麗だ……。」

「?なにか言いましたか?」

「いや……。」

私は王雅様がなんといったのかわからなかった。

王雅様はとても泣きそうな顔をして私を見た。











王雅様はなぜ私をそんな悲しい目で見つめるの?
















「茶々。」

王雅様の耳飾りが風で揺れチリリンと鳴った。王雅様は私の手を取り涙ながら

「もう俺を一人にするなよ……。」
















私はその言葉になぜか涙をこぼした。

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