第4話 夢の中で
――きなさい。
獅子野は何かに呼びかけられている。
――起きなさい!
目を覚ますとそこにはローレッタが居た。
「戦いか!?」
「バカね、セーフポイントでは襲われる事はないわ」
「……じゃあなんで」
「スマホの中って窮屈なのよね」
そんな事で出てきたのかと呆れる。
しかし、じゃあどうしたものかと思案していると。
ローレッタがゲーム機を見つめていた。
「格ゲー、やる?」
「やる!」
しばらく対戦する。
元より格ゲーが特段上手い訳ではない獅子野と。
初めてプレイするであろうローレッタの戦いはグダグダに終わって。
それでも二人は楽しんで笑いあった。
「はー楽しかった」
「そりゃよかった」
「ねぇあんた生き残ったら何がしたい?」
「へ?」
今まで生き残る事しか考えてなかった。
その先の望みなど考えてもいなかった。
「何が、待っているんだ?」
「莫大な富か、願いの成就」
莫大な富とは勝ち上がった時に既に貯まっているお金の事だろう。
では願いの成就とは?
それを問うと。
ローレッタは顎に手を当てながら答えた。
「富を諦める代わりに、一つだけ好きな願いを叶えられる。それこそ並行世界の可能性を拾うような願いを」
なるほど、と思った。
並行世界を旅する彼女達ならその可能性を拾って来る事も可能という事だ。
途方もない話だが。
空から降る巨大な金塊より真実みがあった。
目の前で見た事よりも聞いた事のが現実みがあるだなんてあべこべな気もしたが。
獅子野はそれでもローレッタの言葉を嘘とは思えなかった。
「どんな願いでも、か」
「なにかあるの?」
「たった今、思い付いたのが一つ」
「聞かせなさいよ」
「秘密」
ローレッタがむくれる。
獅子野は笑いながらその頭を撫でた。
彼女はそれを受け入れる。
するとスマホに通知が入った。
『残り参加者二人、至急、決着をつけてください』
無慈悲に告げるカウントダウン。
ローレッタが視線を鋭くする。
「たぶん、生き残ったのは私達とこの前、戦ったあの二人」
それはただの予想でしかなかったが、同じ予感が獅子野にもあった。
「この前みたいな戦い方じゃ勝てない」
「……そうね」
「俺に考えがある」
「シシノに?」
彼は頷く。少女の期待に応えるように。
そうして二人は家を出た。
セーフポイントを抜け出す。
それはバトルフィールドに出る事を意味する。
一瞬で転移する。
場所は都心の交差点。
歩行者も車も何も無い。
あるのはがらんどうの建物だけ。
そして相対するオオツキと獅子野。
ローレッタとリーン。
その中間にローブを着た何者かが舞い降りる。
「あれがこのゲームの主催者、毎回、最終戦だけ見に来る悪趣味な奴よ」
ローブで全身を包み込んでおり表情を伺い知る事が出来ない。
「それではこれより第二百十一回目の決勝戦を始めたいと思います」
男とも女ともつかぬ声が響く。
スマホを構える二人の男。
前に出る二人の魔女。
ローブの人間が腕を振り上げる。
「では――」
息を、固唾を飲んだ。
ローブが腕を振り下ろす。
「――始め!」
互いに即課金した。
大鎌と拳銃が交差する――
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