〈吾輩はサーバーである〉
「名前はまだ無い。どこで生まれたか頓と見当がつかぬ。何でも豪く立派な部屋に置きざりにされていた事丈は記憶している。吾輩はこゝで始めて人間といふものを見た。然もあとで聞くとそれは医者といふ人間中で一番見栄張りな種族であつたさうである」――。
*
1999年10月、弘前市医師会のインターネット専用サーバーが稼動した。
医師会長室に入ると、コバルトブルーの可愛いらしい〈キューブ〉が目にとまる。たとえ真夜中に忍び込んだとしても、ぼぉっと灯る大きなグリーンライトが目印になってしまうだろう。サーバーは年中無休24時間稼動だ。必要に迫られ、お守り役はUNIXコマンドもかじった。
私は当時、3つの委員会(情報システム・学術生涯教育・広報)に所属していた。
「弘前市医師会の情報化元年!」を掛け声に、インターネットの啓発活動を進める。
◇弘前市医師会の公式ホームページを公開。
医師会の品位を保つようデザインには気を配ったつもりだが、短い制作期間のため内容的には開発途上の感が否めない。
ホームページの目玉商品として『かかりつけ医のコーナー』を設けた。会員施設を診療科別に分類し、それぞれ五十音順に並べたもの。各施設の院長名や住所のほかに電話とFAX番号も記載した。医療施設が独自にホームページを開設している場合はクリックして飛ばせたが、リンク先は4施設だけという寂しい時代であった。
そして12月には「ホームページを作ろう会」と銘打って会員向けに講習会を開いた。老人力をお持ちの先輩方も比較的飲み込みは早く、一日も早い仮想開業に踏み切ることを願ったものである。
◇弘前市医師会員専用のメーリングリストも運用開始。
参加者を集めるため、弘前市医師会報に次のような投稿をした。
「もう少し現実的な利用法として、情報交換や討論のための会議室が考えられる。これを利用して、オンラインでの委員会を開催することも可能である。つまり、実際に医師会館へ出かけなくても、都合のいい時間に自宅から参加できる。この電子会議は各種研究会や勉強会にも応用できるので、週末の夜をゆっくりと過ごすことにもつながる。このように便利なインターネットではあるが、研究会の後で行われるお楽しみの懇親会を代行する機能はない」――。最後の部分はシャレのつもりだが、通じたかどうか……。
◇弘前市医師会報の電子版も提案。
しかし、これは相当に時期尚早だったらしい。
あの頃の苦労を思うと、インターネットの仕組みを意識せず情報発信できる現在は夢のよう。
おまけに、接続時間を気にせず使える常時接続が当たり前の時代だ。
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