2#50 混混
最悪のタイミングで記憶が戻った。
そうだ。そうだった。俺には最愛の……何よりも大切な彼女が……恋人が居た……いや居る。
……花園真理――。
出会ったその日に、ひと目見て恋に落ちた。
衝動に駆られるまま自分の心に従って告白して、そして了承を得て付き合い始めた。
紛うことなき俺の一目惚れで、彼女の事は何一つ知らなかったけど、付き合ってから長い時間をかけてお互いに理解を深めていった。
「俺でいいんですか?」
「キミでいいも何も無いだろう。ボクの相手を出来るのがキミ以外にいると思うのかい?それともなにかな。キミはボクと別れて他の女と付き合う予定でもあるのかい?あるのならばその予定はボクが直々にキャンセルしておくよ。キミの今後の予定は全てボクで埋まっているから他人が付け入る隙は一切無いさ。それに、ボクの今後の予定も既にキミで埋まってしまっているんだ。キャンセルは受け付けてないよ?」
「した覚えのない予約が勝手に……悪徳業者みたいだ」
「その悪徳業者と自ら進んで契約したのは何処の誰だったかな?」
「ぐぅのねも出ないですねー……まぁキャンセルするつもりなんて無いですけどね。ただちょっと不安があります」
「不安?なんだね。言ってみるといい。ボクがサクッと解決してあげよう」
「こんな幸せでいいのかなって」
「ふむ。なるほど。その不安を解決するのは流石にボクでも難しい。なにせボク自身もキミと同じ不安を抱えていたところだ」
「それじゃ2人で解決しましょうか」
「そうだね。2人で解決しよう」
俺の初めての体験は彼女だった。
なんでこんな大切な事を忘れていたんだろうか?いや催眠アプリで忘れさせられていたのだろう。
心のどこかで一線を越えてはいけないと抵抗感があったが、原因はここにあった。
しかし、それもアホの突飛な行動で瓦解して、俺の中の抵抗が也を潜めてしまった。
その結果。
「皐月くん……しゅき……むにゃむにゃ……」
「兄さん……もっと叩いて……すぅーすぅー……」
「私は……皐月きゅんの……肉おなほ……ぐへへ……」
「僕の事……好きすぎかよォ……にちゃぁ……」
「すやぁ……」
俺含め6人で雑魚寝(裸)。
気分が盛り上がりすぎてしまった勢いで鈴木を押し倒した。もう2回もしているんだしという思いが心の片隅に少しだけあったのだが、鈴木は処女だった。
それを見て黙っているわけが無い残りの2人、涼花と麻沙美。
涼花には再び義妹を人質にとられた。汚いオッサンと寝て稼いだお金でウェディングドレスを買ってくると言われた。想像しただけで脳が壊れそうになった。ここでまたお尻ペンペンして思いとどめても、涼花がまた同じ行動に出るのは予想に難しくない。覚悟を決めた。義妹に手を出すのは抵抗があるが既に手を出させられてしまっている話だったのだが、涼花は処女だった。
麻沙美にはただただガン泣きされて縋りつかれた。まぁ全部麻沙美の演技だったんだが。しかし俺はその真に迫った名演に心を揺るがされてしまった。泣けばいいと思いやがって。その通りだよ畜生。もう4人に手を出して、既に1度している相手を前にして俺は腹を括ったのだが、麻沙美も処女だった。
この場の全員、処女だった。そして俺はそれを全部、奪った。
驚きのクズ。絶するクズ。とてもクズ。
どうなってるんですか?みんな既に経験済みって言ったじゃないですか?これやっぱりみんな催眠にかかって幻覚か幻かなんか見せられてましたよね?
諦めた。
もうやってしまったものは取り返しはつかない。俺は代わる代わる女の子に手を出した5股のクソ野郎。
ここまでくればもうどうにでもなれと開き直って快楽に身を任せて溺れるに溺れた。全員まとめて相手をした。
そんなことをすれば否が応でも愛情ないし愛着が湧いて、独占欲も生まれた。こんな可愛い子らが俺を好きでいてくれる事に幸せを感じて、そして、それを手離したくないし、他の奴には渡したくないと思った。
ここに至る経緯に問題があろうがなかろうが現状が現状。俺は5股する覚悟を決めて腹を括って寝た。
そのタイミングで真理さんとの記憶が戻った。
覚悟を決めてからのコレ。ホント最悪のタイミングだよね。
これも会長の陰謀か策略か。会長の意地の悪いニヤつき顔が幻視した。
俺は確かにギリギリ後戻りは出来る位置には居たのだろう。しかし俺はそれを突き破って(直訳)進んでしまって、後戻りが出来ないところまで来てしまった。
そうは言っても記憶に無かったしなぁ……なんか、この言い訳すっごいクズ感出る。いやクズなんだけど。しょうがなくない?しょうがないよね?なんか言い訳を重ねれば重ねるほど安っぽく嘘っぽくなってく。ホントのホントなのに。
どうする?どうしたらいい?どうすればいい?
混乱する頭で俺は結論を出した。
「彼女が居るのでみんなとは付き合えません。大変申し訳ありません。全員別れてください」
クズ、ここに極まる。
深深と額を床に擦り付けて俺は土下座した。
「ダメですよ皐月くん。責任はとってください」
「何言ってるんですか兄さん。責任はとってもらいますよ」
「皐月きゅんの頼みと言えどそれは聞けないなぁ。しっかり犯されてしまったからなぁ。責任はとってもらわないとなぁ」
「別れる?なにそれそんなの無理に決まってるよね。ちゃんと責任とってよサツキ」
「さ、皐月……俺を……捨てるのか?ぐすん」
そうなるよなー(遠い目)
「それで皐月くん。彼女と言うのは誰のことを言ってるんでしょうか?私の事ですよね?まさかこの場に居る人以外の事を言ってるわけじゃないですよね?」
「いや、それが……実は俺にはもう年単位でお付き合いさせてもらってる彼女が別に居まして……」
「「「「「はぁあッ!?」」」」」
「に、兄さんに彼女……?それも年単位……?私、知りませんよそんな事……誰ですかその相手は!?」
「みんな知ってると思うんだけど……催眠アプリ配った人……」
「花園かぁぁぁぁぁあああ!!!あのクソ女めっ!私にもそんな素振りはまったく見せてなかったというのに!あの女ァ!知っていて私を焚き付けていたのか!?なんという意地の悪さッ!」
「さぁつぅきぃぃぃいいい!!!どーゆーことだよぉ!僕に内緒で彼女作ってたのかよ!意味わかんなだけど!今すぐその人と別れてきてよ!」
「皐月と花園パイセン付き合ってたのかよ……マジか……そっかだったら俺とのことは遊びだったつーわけか……うぅ……傍に居てくれるっていったのによ……ぐすっ……」
てんやわんや。
俺の発言で場は混沌を極め、みんな落ち着くまでしばらくの時間を要した。
とりあえず俺は鈴木を全力で慰めた。
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