2#31 現行犯



兄さんが襲ってくれない(ぴえん)



おかしいです。絶対おかしいです。性欲の塊である兄さんがいくら誘惑しても私の事を襲いません。何故ですか?


まぁ、それも兄さんといえば兄さんだからなんでしょうけど。私の言ったこともありますし、それにまだ兄妹という関係に引っ張られているのでしょう。


兄さんの脳をぶっ壊すためにあの手この手を使いましたが、まだ兄さんの脳をぶっ壊すには至らない。もっと強烈な一撃を脳にぶち込んでやる他ありません。



というわけで兄さんをラブホに連れ込みました。



ヤリ部屋代表といえば兄さんの部屋なわけではありますが、あそこだと日常感が非常に強いですし、それに生徒会長あたりが隠しカメラとか盗聴器とか仕掛けて無いとも限りませんので危険が危ないです。


入る際に兄さんが「お金……」とか呟いてましたが、無視です無視。


ラブホテル……そこはただただ男女がえっちな事をする為だけの場所。


ここに来たのなら流石の兄さんと言えども戦闘モードに移行するはずです!さぁ兄さん!私は等の昔に戦闘準備は万端なのです!激しいぶつかり愛を始めましょう!



「うわーめっちゃベットふかふかー」



兄さんポケっとベットふかふかして遊んでます……なんか全然そういう雰囲気じゃないんですが?リラックスしすぎじゃありません?もっとなんか息荒くして今にも飛びかかってきそうな感じになるところでしょうよ、そこは……。


ふふふっ、兄さんがあくまでそういう態度を貫くと言うならば、わかりました。ここで私の秘策中の秘策を見せてあげますよ!


これを見れば流石の兄さんも陥落するでしょう。


私は自分のスマホを取り出し、操作を始める。動画フォルダを開き、そこで目的のものを探す……。



……ない?


…………あれ?


………………なんで?



ないないないないない……私と兄さんの……初体験を撮影した動画が……ない?


なんで?なんで?なんで?


撮影した時にしっかりと撮れているかは確認したはず……間違って消してしまった?いやいやそんなはずは無い。



「涼花……どうかしたか?」



あるはずの物が無くて私の頭は混乱してアタフタしている所に兄さんから声がかかりました。


兄さんは訝しむようにコチラを見ています。



「えっ……ああ……いや……なんでも」



どうしましょうか?ここでバーンと兄さんと私の初体験動画を見せつけて、そのまま流れで持っていこうと思っていたのに肝心の動画がありません。おかしいです。一体全体どういうことなんですか。


こ、こうなったらまた動画を取り直すしか!となればまた催眠アプリを使って!


そして私は催眠アプリを起動した。



「に、兄さん……これちょっと見てもらっていいですか?」



これが悪手となった。


もう少し落ち着いて冷静に行動しておけば良かったと、私は後々後悔するのでした。




◇◇◇




「…………」


「ふぅ……どうやら催眠にかかったようですね兄さん」



涼花が催眠アプリを使った。


そして俺は涼花のスマホの画面を見ずに催眠アプリにかかった演技を始めた。


とりあえず虚ろな感じで項垂れていると、どうやら涼花は俺が催眠にかかったと勘違いしてくれたようだ。


まったく……この義妹は兄に催眠アプリを使うとはどういつもりなのだろうか?これはしっかりと見極める必要がある。


それでもし間違った道に進むというなら、そこはしっかり兄としてお説教せねばなるまい。


だがしかし俺は涼花を信じてる!涼花はいい子だ!

いい子の涼花がそんな変なことをするハズは無い!



「それじゃ兄さんハメ撮りしましょう」




絶句。




「あ、でも、その前に一緒にお風呂入りましょうか。さぁさぁ兄さん脱いでください脱いでください」



あっ。いかんいかん。ちゃんと催眠中の演技しないと。えっとなんだっけ?ハメがなんだっけ?ハメハメ波の動画撮影してTikT〇kに投稿するとかそんなだっけ?いやーこの年で全力のカメカメ波はちょっと恥ずかしいけどバズるために頑張ろっかなー?っていうか今気がついたんだけどカメのハメする波ってコレ完全に下ネタじゃない?ヒロインはチチとかブルマだし完全に狙ってるよね?この歳で知る衝撃の真実。


なんか色々考えていると気がついたら服を脱がされていた。



「……えっ」



そして涼花は俺の服を脱がせたところで驚愕に動きを止める。美春の1件で俺の上半身は生々しい傷だらけになっており包帯でグルグル巻きになっていたからだ。



「に、兄さん……これ……どういうことですか?」


「転けて怪我した」


「いやいやいや転けたぐらいではこんなにはならないでしょう……あれ?でも今催眠中ですよね?ということは本当に転けてこの怪我を……?どんな転け方をすればこんなになるんですか……怪我……してるんですよね?大丈夫なんですか?」


「傷はもう塞がってるので大丈夫です」


「そうですか……包帯外しますよ?」


「はい」



涼花は丁寧に俺の肌に巻きついている包帯をとっていく。包帯の下から覗いた地肌は傷だらけではあったが傷口は塞がっていて血なども滲んではいなかった。



「これお風呂に入ったら染みて痛くないですかね……とりあえず試してみますか」



言いながら涼花は俺の手を取って浴室に向かう。


ラブホの浴室は動き回っても全然余裕がありそうな程に無駄に広い。そして何故か照明が紫色でとてもスケベな雰囲気です。そこで涼花はシャワーノズルを手に取って蛇口を捻ってお湯を出した。それを少し手に当てて温度を確認する。



「兄さん、もし痛いようなら言ってください」



そう言い涼花はそろそろと俺にお湯をかけた。少しひりついたが、そんなに痛くもないのでやはり大丈夫そうだ。



「大丈夫です」


「よし。これなら問題無さそうですね。ささ、兄さんお風呂一緒に入りましょ!」



涼花は俺を手招き、一緒に泡泡の2人並んで足を伸ばしてもまだ余裕がある大きな浴槽に浸かった。



「ふぅ……いい湯加減ですねぇ。泡泡も気持ちいいです」



確かにいい湯加減ではあったが、お湯と違って泡泡が傷口にわりと染みる。幸い我慢できないこともなかったので我慢である。催眠にかかってないと涼花に告げるにはまだ早い。



「しかし……なんで最初に催眠アプリを使った時の兄さんとの動画が無いんでしょうか……あんな明確な既成事実を消す筈なんてありえませんし……そういえば撮影して確認した後は見てませんでしたね……惜しくはありますが無いものは無いで仕方ないです。もう1回撮影すればいいだけの話です。兄さんとの間の確固たる証拠は言い逃れが出来ないようにしっかりと残しておかなければなりませんからね。そうとなればさっさとお風呂から上がって……あっ、でもお風呂でちょっとしてみたいです……まぁ、兄さんの性欲つよつよですから2、3回は平気でしょう。今日は尽きても、なんだったら催眠で無理矢理にでも私が満足するまで付き合ってもらいますからね兄さん」



ウチの義妹の性欲強すぎん?


もう何から突っ込めばいいのやら……。



なんにしても……前科アリの現行犯逮捕だな。



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