2#29 あれ?



通学路、当然の様に俺の腕に抱きつき一緒に歩く涼花。お兄ちゃんの贔屓目無しにしても相当可愛い我が義妹。周りから嫉妬やら羨望やらの視線が突き刺さる。


だがしかし、美春に首輪で繋がれて登校した俺にとって今のこの視線は随分と生易しいものであった。この程度どうということは無い。ケロリ。



「あっ……皐月くんに涼花さん……」



声がした方を向くとそこには聖歌ちゃんが居た。



「お、おはようございます、皐月くん」


「おはよう聖歌ちゃん」


「す、涼花さんも……おは、おはようございます……」


「これはこれは白井先輩。おはようございます」


「ぐぬ……ぐぬぬぬぬぬ……」



ニヤリと口元を歪める涼花に対して、口を結んでぐぬぬしながら悔しそうな表情の聖歌ちゃん。


涼花はこれみよがしに俺と絡める腕に力を込めて、ぐいぐいと体を押し付けてくる。涼花のそこそこいい感じの胸が押し付けられてやわこさ満点。300万点。



「白井先輩、わかってますよね?」


「わ、わかってますよ……そ、それはそれとして皐月くん、体調は大丈夫なんですか?2日も休んでいたので……私、心配で心配で……」


「心配かけてごめんね。体はもう大丈夫だから。ありがとう聖歌ちゃん」


「いえ……そんな……お見舞いにもいけなかった私なんて……あまり無理はしないでくださいね?」


「何かあっても私がついてますので大丈夫ですよ白井先輩。というわけで……白井先輩さっさと先に行ってください?」


「ぐぬ……ぐぬ……」



項垂れながら、見る間に涙目になっていく聖歌ちゃん。何かを言いたくて言いたくて仕方がないが、言うに言えないといった感じだ。


じっと何かを訴えるように聖歌ちゃんは俺を見つめる。



「さ、皐月くん……その……し、信じてますからね……?」



何が?とは言わなかったが、なんの事だろうか?


というかこの光景に激しくデジャヴを覚える。2、3日前にもあったなこんなこと。



「私は兄さんと一緒にゆっくり登校しますので白井先輩は1別々に登校してくださいね」


「うー……うー……」



唸りながら恨みがましい視線で涼花を睨みつける聖歌ちゃん。目元に貯めた涙が今にもこぼれ落ちそうである。



「さ、先に……先に……行かせて……もらいます……うわーん……」



そして聖歌ちゃんは袖で目元を拭いながら走り去ってしまった……。


この光景も一回見たな……コピペしたみたい(一部分コピペあり)。




◇◇◇




涼花を1年の教室まで送り届けて自分の教室に着いた俺に訴えるような視線を送ってくる者が1人。先程別れた聖歌ちゃんである。


声をかけた方がいいだろうか?しかし先程涼花に「今日は私以外の女の人との接触は極力避けてくださいね。特に同じクラスの白井先輩とか」と釘を刺されているから、やめておくか……。



「あと2日……あと2日……」



ボソボソと虚ろに呟く聖歌ちゃんの声は俺の耳にまでは届いてこなかった。




◇◇◇




涼花:ちょっと具合が悪くなって保健室なう

涼花:今すぐ看病しに来てね♡‪



授業中にそんなメッセージが涼花から届いた。



嘘くさぁ……。



ウチの義妹に病弱設定などは無い。なんだったら小中と皆勤賞を貰い高校でもまだ学校を休んだことは無い涼花は健康体そのものだ。ちなみに俺も皆勤賞だったが昨日、一昨日と休んでしまった。ちょっと悔しい。


そしてこの微妙に巫山戯た文面。まぁ体調が悪くなったのは嘘だろう。


学校、授業中、保健室……となれば誘惑の試練か……あまり気乗りはしないが行かない訳にも行かない。



「先生。ちょっと具合悪いので保健室行ってきてもいいですか?」



2日も休んでいたこともあり、わりとすんなり許されて俺は保健室に向かった。




◇◇◇




保健室にて兄さんが来るのをベットの上で横たわって待つ私。ブラウスの前ボタンを全部外し、おはだけ状態で兄さんに襲われる準備も万端です。これではぁはぁと息を荒らげながら……。


「兄さん……身体が火照ってしょうがないんです……なんとかしてください……はぁはぁ……」

「今その火照りを沈めてやるぞウガー!」

「きゃっ!兄さんのえっち!」


兄さんちょろ。作戦は完璧ですね。ふふふっ、兄さん保健室なんていう高校生のヤリ部屋に足を踏み込んだならそういうことなんですよ。さぁ私の誘惑にまんまとハマりやがってくださいませ。



ガラガラガラ……。



「涼花、いるかー?」



控えめに扉が開く音と共に兄さんの声がしました。来ましたね。



「兄さん……こっちです……」


「そっちか」



スタスタと足音が近づいてきて敷居になってるカーテンがひらりと捲れて兄さんがひょっこり顔を出しました。



「兄さん……身体が火照ってしょうがないんです……なんとかしてください……はぁはぁ……」



左手で胸あたりを隠し、右手を股の方に置き必殺の誘惑ポーズ。こうすればちょろあまな兄さんなんてイチコロですよ!



「そうか。ちょっと待ってろ」


「……へ?」



言うや否や兄さんは首を引っ込めしまいました。



……あれ?



しばらくして兄さんが戻ってきます。



「ほらこれ氷水詰めてきた奴。あっ、その前に一旦身体拭いた方がいいか。タオル濡らして持ってきたからこれで拭いてやる。ひんやりしてて気持ちいいぞ。ほら全部脱げ脱げ。それじゃ拭いてくぞ(サササササッ)。よし、こんなもんかな。ほらそれじゃ服着せるぞ。足上げてパンツに足通して。よしよし。ブラは……朝も思ったんだがちょっとサイズ大きくないか?今は若いからいいかもしれないけど、ちゃんとサイズにあったのしてないと将来的にタレるらしいぞ?大丈夫か?今度一緒に下着見に行くか?よし涼花はいい子だなちゃんと服着れたなー。それじゃ横になって氷水額に乗せて、あとはお兄ちゃんが仰いでてやるからな。ゆっくり休め」



あー……氷水がヒンヤリしてて気持ちいいです……それに兄さんが仰いでくれて、いい感じです……。


なんだかちょっとウトウトしてきましたね……。



……あれ?なんか思ってたのと違う……。









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