星を見た

青空一星

その日

 夜空を見る。意味ありげに見上げるのではなく、ぼうっと眺めた。光る星は一つ、他には無かったのだ。その光が少し消えかかった気がして目を凝らす。だんだんと細くなり、すっかり見えなくなってしまった。どれほどの時間、星のあった場所を見ていても、その光が再び発せられることは無かった。それがとても悲しくて、信じていたくて視線を残す。


 ふと、他の星に目がいきそうになる。他の星はあの星程の光を発しておらず、見えないとばかり思っていた。今、見えるかもと思ってしまった。だが、見ないように視線をずらして瞳を閉じた。


 あの星を忘れたくない。例え、それほど付き合いの無い星だったのだとしても、あったはずの未来を私は覚えているから。容易に浮気などしたくないのだ。


 私は悲しい。私のまだあまり知らない貴方はもっと輝けていたはずなのに、諸に光を当てぬまま、私の元から去ってしまった。


 もっと見ていたかった。もっと共にいたかった。そんな空振りの告白を胸に置いて、私は進むのだ。  私の中で、貴方が無意味になることは決してない。 貴方はそこにいて、私と向き合い、私を見たのだから。貴方の中で私という存在がどれほどちっぽけでも構わない。私は貴方を知っていたのだ。その光の輝きを、たしかにこの目で見た。


 さようなら、素晴らしき貴方。もういない貴方の面影を、私は心に留めるのです。

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星を見た 青空一星 @Aozora__Star

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