神聖にして邪悪なるものどもの王

第1話 僕のもの

１６歳の時に、僕はまるで別の人間に変わってしまったのだと思う。

他人がどう思っていたかはわからないが、僕はこの時まで明るく、健全に

まじめに、教えられたことを素直に受け止め、それを勤勉に繰り返し、できるように

なるまであきらめないことを美徳として努力してきた。

１０歳から始めたサッカーも、数学や英語の学習や大人が教えてくれる清潔感の

ある服装と、決して輪からはみ出さない友人達との盟約も守ってきた。

僕はずっと誰かに認められたかった。どうしたら自分を認めて受け入れて

もらえるかを考え、ずっと努力を絶やさなかった。

そのすべては１６歳の時に失われてしまった。

では後悔があるかと言われれば一切ない。僕にはあんなにほしかった居場所ができたのだから。そして、あんなにも気持ちがよく、満たされる経験ができたのだから。