特殊な能力を持った少女に訪れた偶然の出会いに引き込まれ、特別な感情によって結びつきを強めて行く2人にほっこりしたかと思えば、謀略渦巻く世界観が背後で広がりを見せて行く。
この物語に登場するチームメイト、パトロンたち、その他描かれた人間関係の全てに意味があり、淡々とリアルに描かれる戦闘描写と共に緊張感ある物語を作り上げています。
ハラハラさせるSF的展開が好みの人にぜひお勧めしたい作品です!
しかしこの作品の魅力はそこだけではありません。
主人公は自身の存在意義に対し疑問を抱き続け、そして困難を経てその答えを見い出し、新たな事件をきっかけに1人思い詰めて行く。こうしたサイクルを通して、信念と、恵まれた仲間たちとの信頼関係を築いていくその複雑で繊細な心情描写に、心が揺さぶられること間違いありません。
ハインラインのような正統派SF作品にウェブ小説で出会えるとは、以前の自分は思ってもみませんでした。
精緻に描かれたSF描写、知識は圧巻の一言。SF全盛期、一昔前のあの古き良き時代が蘇ってくるようです。
自分はハヤカワSFをよく読むのですが、それらに引けを取らないコシのある硬派な文章で、非常に読みごたえがありました。
ただ昔の時代っぽいというだけでなく、今の時代にアップデートされたキャラクターの仕草が生活感を与え、記号的な『萌え』はないのですが『可愛い』と感じさせるのに十分すぎるほどです。
この本編とは別に追憶編があるのですが、その中での台詞回しがまた気が利いていて、SFというものをよく研究していると思わせました。
細部にまでこだわった設定の本格派SFです。
まず物語の前半に戦闘航宙機同士で繰り広げられるバトルシーンがあり、圧巻の迫力です。
戦闘航宙機は宇宙用の戦闘機のようなものですが、機体が縦横無尽に飛ぶ描写や、独特の兵器での戦いなど息を呑む描かれ方がしています。
機体のコックピットの内装から、内蔵されているシステムまで設定をこだわっています。
色んな単語が出てきますが、SFの知識の無い私にも「何かすごーい!」という感じで分かりやすく書かれています。
派手な宇宙での戦闘後、17歳なのに凄腕パイロット、ラディウ・”エルアー"・リプレーとヴァロージャ・ロバーツが出会うことになります。
ラディウは何やらワケアリの様子であり、軍のパイロットであるヴァロージャも何か裏がありそうです。
お互いに秘密を持った両者が出会うことで、非常に興味をそそられる構成になっています。
まだ第一章ということで、これからの展開が楽しみな一作です!