活用方法

 その建築会社は大手企業までのし上がった。

 どの家も現代の技術では造れない代物。

 初めはミニチュアから家を取ってきて、それを魔法で実現させて建築費を異様に安くし、利益も大増加、顧客も大増加となり、建築業界は1人勝ちとなった。


「もうここから勝手に取っていけるスタイルにしよう!」


 だだっ広いミニチュアの世界。

 次に始めたビジネスはお客様にそのミニチュアから好きに取って貰い、それに見合う値段に人件費等を合わせたもので売るというものだった。


 家だけじゃない。

 森も取れる。簡単に自然は増やせるんだ。


「この場所を買い取らせて下さい」


 いつの日かこのミニチュアの世界は国に買い取られた。が、建築会社の彼らは一生豪遊できるほどの富を築くことができた。


 それからというもの────


 ミニチュアから色々なモノ──建物を初め、自然のモノなど──を取って、現実に移し替えた。

 自然は大量消費された。

 建物は今も尚解明されない技術力で造られた近未来的なものに変わった。建て直しすら必要のない優れすぎた建物が立ち並び、ハイテクなアスファルト、未来的な車、もうそこに今までの姿は見られなかった。

 もう寿命ある家なのは、普遍的な車や電車が通るのは、とっくに昔のことのように感じられる。


 この国はたった十年でとても大きく変わっていた。


 もう変わることもない。

 そうなる頃にちょうどミニチュアの世界も更地当然のようになった。もうそこから取れるものなどない。


「────現実のものをミニチュアの世界に移すことはできますか?」


「ええ、できますとも。まずミニチュアにしたいものに魔法をかけてミニチュアにします。そのミニチュアをこの世界へと置いて下さい。そうすればそのミニチュアが完全にこの世界と同機致しますので。ミニチュアにしたらそれは二度とは取り出せないのでご注意ください。では魔法の言葉をお伝えします。左肘に手を当てながら右手で右の肩甲骨に触ります。そして、大きく内股になってこのように叫んで下さい。『ガンヤペプヌトリン』とね」

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