第5話

我が編集部はこのところ混乱を極めていた。

正確いえば、橘氏失踪事件を取り扱うか否かに、結論がつかず-混乱しているポーズを取っていた。


事件がどう転ぶか分からない中、彼の本職-音楽家としての活動にフォーカスを当ててこの連載にねじ込むか。


-話題性があるものをただ取り上げればいいというものではない。彼が本当に犯罪者となってしまったらお蔵入りだ。もっともらしい意見を述べていく上司たち。


-いやいや今しかないっすよ、この起死回生のチャンスでうちの看板守りましょうよ。ついでに今年のMVP獲りにいけません?と意気揚々とこの騒動で部署の昇格を目論む平凡記者たち。


・・・・・どうでもいい。


私は、平 なごみ。

音楽についてをただ純粋に、文字に起こし、誰もが手に取る新聞の、娯楽面にある小さな、小さな小窓から、想いを届ける。それが私の仕事だ。


今編集部であーだこーだ騒いでる内容は、私は関係ない。関係ない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最期のメロディーに乗せて @rin_0414

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る