第2話

音楽支援会とは-およそ30年ほど前から音楽業界で確立された仕組みである。原則、あらゆる演奏者、楽団、歌手、は音楽支援会と名のある組織に属していなければならない。

理由は、あらゆる音楽の表現において政治・犯罪に関わる恣意的なメッセージを組み込まないことを演者に遵守させ、所属の支援会がこれを保証するためだ。


何故このような仕組みが確立されたのか-30年ほど前から、一部の人間に音を通じて演者の意図、感情などを汲み取る能力者の存在が露わになった。


この特殊な能力は超越音感と呼ばれた。あらゆる権力者はその昔、演奏者と超越音感を持つ者を買収、政治、犯罪の秘匿メッセージを音に乗せ暗号化し、様々な密約や取引に利用されていたという。


「羽田さん、なんで、俺なんかに、見つけられるわけないですよ。手掛かりもないし、、」


実際、1ヶ月間仕事で側にいただけで、俺は橘さんのプライベートや交友関係なんて、殆ど知らない。


「そういってもね。我々も君に頼るほかない。この疑惑を晴らし、20日のコンサートは橘氏が出演しなければ。書き置きが橘氏本人のものなら、必ず君に接触するはずだ。」


羽田専務は新聞の一面を机の上に広げ、苦々しい顔で睨みつけていた。


-間瀬 総一氏、自宅のリビングにて死亡。直前に橘氏と接触か。


今や橘さんは殺人容疑をかけられた指名手配中の身なのだ。間瀬 総一、間瀬音楽支援会の代表だ。

橘さんの師匠、正木 仁先生の旧友であり、この支援会制度の立役者だったはずの-


橘さん、この状況、どうなってるんですか。。

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