6.おしゃれな居酒屋に

 わくわくしながら、連絡しあう。

 こんなに高揚感を感じるのはいつぶりだろう。



 なぜかとんとん拍子に会う約束が取れた。

 訪れたのは、おしゃれな個室の店内。

「展開が速すぎるかもしれませんが、婚約してくださいませんか」

「私でよいのですか?」

 優秀すぎてもっといい人がいる感じもする。

「はい。お願いします」

 個室だから込み入ったことを聞くのにはちょうどいい。

「大変失礼ですが、ご収入は?」

「気になりますか?」

「……もちろん。職がなくなって路頭に迷くなんてことがあったらと思うと怖いですから」

「確かに。いまは手取りで――くらいですね」

「安心しました」

「私も聞かせていただいても?」

「どうぞ」

「浪費癖は激しい方ですか?」

「全然ですね。驚くと思いますよ。プチプラといえどそれなりに手入れすれば切れますから」

 そんなものなのかとイケメンさんは目を白黒させる。

「ああ、やはり妻となったら立場が変わりますから、あなた好みのTPOにあった服3着くらいは贅沢させていただきたいですけれども」

「それくらいはもちろん」

「あとは、そんなに物欲がありませんから」

「では、好きなものは?」

「――イルカ」

「では香さん、今度会うときは水族館でも行きましょうか。僕も好きなんですよ、静かで」

「はい。喜んで」

 イルカはかわいくて賢くて、ショーがあるなら何度か見に行ってしまうくらい好き。

 イケメンさんは嫌なそぶりも見せずに了承してくれた。

(よかった。趣味合うのかも)

 社会人をしていると自由に使える時間が少ない。また会おうといったが、もうすでに楽しみでうれしい。

 2人ともおしゃれな居酒屋を出て、帰路についた。

 自宅に入った途端、ガッツポーズして、眠れなかったのは内緒の話。

 2人ともに。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る