4. お互いのドキドキ

 ☆☆

 新しい化粧品を試していると、ラインが入る。

「進藤から教えてもらいました。よろしければ登録お願います」

 聞いてはいたが、実際にメッセージが来るとドキリとしてしまう。

 このドキドキは随分と久しぶりだ。

 片想いの時にはなかったドキドキ感。

 迷惑ではないか時間を確かめ、

 文章に誤字はないかたっぷり5回は見返したので

 かなり時間が経ってしまった。

「登録しました。ありがとうございます」

 

 ピコン♪

 

 あまりにすぐに返信されるものだからスマホを取り落としてしまった。

 ベッドの上で被害はほとんどない。

 画面も無事だ。

 ほっとしながら画面を開く。


「次の休み、空いてますか?」

「はい。大丈夫ですよ」


 彼ではないのかもしれないが、杏奈には憧れの先輩のことを言ってある。

 

 どんな形でかはわからないが、それとなくは伝わっているはずだ。


 今の悩み事をぶつけてみることにする。

 職場の憧れの先輩から相談される。

 浮気の誘いのようだったこと、そうして断わったことを話した。


「勇気がいったでしょうに。よく頑張りましたね」

 その文字を見た瞬間に香は泣いていた。

「そう言ってもらえると勇気出してよかったなって思います」

 それだけ打つのが精いっぱいで泣いて疲れて寝てしまった。


 ☆☆

 昨日はあれから返信せずに来てしまった。

 今日も予定通りの出勤時間だ。


(香さんの職場も結構ドロドロしているんだな。うちほどではないかもしれんけど)

 一度会っただけだし、そんなに詳しいほどの経歴は聞き出せていない。

 真摯に仕事に向き合う人に思えた。

 

 そんな彼女にためにしっかりとチェックしなくてはなるまい。


「せんぱーい。今日はなんかシャキッとしてますね」


「ああ。なんとか気持ちの整理がついたよ」


「へー。先輩でも気持ちの整理とか繊細なことするんですね。

 いつも鬼のように怖い雰囲気なのに」


「ほーぅ。ならいつも通りに行こうじゃないか」


「すんませんでした」


 ちょっかいをかけてきた後輩には3倍の量の書類チャックを任せてきた。


 これでしばらくはあいつに指示だしすることもあるまい。


 イケメンで仕事もできる彼は、なんと仕事の鬼として会社に君臨しづつける

 鬼才の持ち主として男性社員の中では有名だ。

 

 その鬼才でイケメンな彼は仕事をサクッとこなして今日も定時帰りだ。

 後輩はまだあくせくとチャックをしている。

(頑張れよ)

 なんだかんだちょっかいをかけてくる後輩は優秀な部類だ。

 

 コツをつかんで素早い処理を学んでほしいと思っている。

 彼は良いなと思っている彼女に今日もラインを送るために帰路についた。


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