第49話:辺境伯領は今日も平和




 聖王国の教皇が、交代したらしい。

 正確には交代していた?

 あの神官を派遣したのは、新しい教皇。

 勿論あの手紙を出すように命令していたのも。


 前の教皇は、お年を召したので公務が滞る前に引退したそうだ。

 ちゃんと神様に、祈りの形で報告されていたのだとか。

 良いおじいちゃんだったのね!と思ったら、おばあちゃんだったそう。

 ちょっとお会いしたかったな~と今更ながら思った。


 今回は野心的なおじさんで、神様に祈るよりも、金儲けに重点を置いているそう。

 自分に関係無ければ別にどうでも良いけど、実害出ちゃったからね。




 聖王国に聖女が挨拶に行くと、全世界に大々的に宣伝がされていた。

 一大イベントみたいになってるけど、大丈夫かしら?

 だって挨拶に行く聖女は、お馬鹿なイザベラと水死体アモローサよ?しかも木乃伊ミイラな旦那も同行するのよ。

 ちょっと公爵子息が気の毒になったわ。


 聖女が聖王国に行く事は、この国には発表されていない。破門されたからね!

 だから、私は今日も平和に神殿で子供達に果物を配っている。


 葡萄好きの少年は、とうとう100点満点を取った。

 お祝いに葡萄と林檎と檸檬を渡した。

「ご両親は檸檬を食べるの?」

「食べるのは母ちゃんだけだよ!でもレモンを食べてる母ちゃんを、父ちゃんが嬉しそうに見てるんだ!」

 あぁ~なるほどね。来年には弟か妹が増えるのね。


 今日は「妻の誕生日なんです」ってスパーリングワインを貰いに来た男性と、「結婚記念日なんです」と赤ワインを貰いに来た女性が居た。

 別々に来たけどこの二人、夫婦なのよね。

 来年は結婚20年らしいので、神殿でお祝いをしてあげたいな。



「カーリー様」

 あら?この声は……声のした方を向く。

「マーガレット様!」

 予想通りの方が笑顔で立っていた。

 他の友人達よりは頻繁に会っているけど、学生時代は毎日会っていたので、ちょっと淋しい。


「実は、暫くお会い出来なくなりそうなので、ご挨拶に参りましたの」

 え?どこかへ行かれるのかしら?

 色々聞きたいのを我慢して、次の言葉を待つ。

「貴族夫人としての務めに集中いたしますの」

 マーガレット様の両手が、自分のお腹に添えられた。


「おめでとうございます!元気な男の子を産んでくださいね!」

 負担にならない程度の力で、マーガレット様を抱きしめた。

「あら、まだ男の子とは決まってませんのよ」

 マーガレット様がクスクスと笑う。

 その声を耳元で聞きながら、なぜか私は生まれてくるのは男の子だと確信していた。


 マーガレット様に神殿の果物を沢山持たせた。

 実際に持ち運んだのは侍女だけど。

 定期的に取りに来るように、侍女の方にお願いもした。



 まさか同じようなやり取りを、この1週間後にアイリス様ともやるとは思わなかったわ。

 私もそろそろ?と思っていたけど、全然そんな事は無く、今日も元気に神殿で領民達と交流している。


 私と二人の違いは何だろう?

 愛か?愛が足りないのだろうか?


 まぁ、別に焦ってはいないので、辺境領地での生活を満喫してからでも充分よね。

 キャスパー辺境伯もまだまだ元気だし、バージルが後継者教育受けてる段階だもんね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る