第47話:神殿を有効活用




 ちょっとむしが飛び込んで来たけど、それ以外は大成功な結婚式だったわ。

 ワインの噴水や不思議な果物の木は、あのまま取っておく事になったのよ。

 良い事をした人へのご褒美として、配るのだとか。


 因みに盗む事は出来ない。

 悪意や敵意のある人は、神殿に入る事すら出来ないからね。

 子供が学校の試験で良い点が取れたから果物を頂戴!と神殿に来る事もあるらしい。

 果物をあげる判断は、神殿に常駐している神官と、神殿に接している三領地の領主に任されている。


 あぁ、勿論、神様と女神様もね。

 住んでるの?ってくらい、うちの領地で見掛けるのよね。




 結婚式から3ヶ月。

 神殿内に置いてある休憩用の椅子に座って、テーブルに頬杖を突いてたわわに実ってる果物を眺めていた。


「ねぇ、この果物、聖王国で高値で売れないかしら?」

 忙しそうに動き回っている神官に声を掛ける。

「は?なんて不敬な!神の果物で儲けようと言うのですか?」

 はぁ?

「いつでも甘熟取り放題なのよ?勿体無いじゃない」


「それならば、聖王国の教皇様に寄進なさい」

「はぁあ!?神の果物を、人間の教皇に捧げなさいと。教皇って随分偉いのね」

 私の言葉に、神官は黙り込んだ。

 私を蔑むように見て、作業に戻る。

 やっぱコイツ嫌いだわ。



 この聖王国から来た神官は、神様に会った事が無い。

 私の事も、聖女に相応しく無いと思っているのが態度に出ている。

 聖女ならば、他人の為につくし、万人を愛し、全てを許す優しさを持ち、誰よりも高潔じゃなきゃいけないんですって。


 どこにいるんだよ、そんなヤツ。

 連れて来いよ。


「この人が居ると、神殿に来るのが嫌になる!チェンジで!」

 どこかにいる神様に訴えてみた。

「なっ!貴様にそんな権利は」

『了解』

 ムカつく神官が何かを言っている途中だったけど、神様の声と共に消えた。

 聖王国に送り返されたのだろう。


 これで暫く神殿の居心地が良くなるわね。

 姿を消していた神様と女神様が現れた。

 執事とメイドを従えて。

 なぜその姿!?天使の二人よね?



 目の前に紅茶と、カットされた果物が置かれた。

 神様と女神様とのお茶会が始まった。


「あ〜神様!女神様!聖女様!」

 手に持った紙を振りながら、子供が駆けて来る。

「見て見て!80点!」

 100点じゃないのかよ!と言ってはいけない。

 元々この子は勉強嫌いで、自分の名前も書き間違えるくらいだったのだ。


『あら頑張ったわね。檸檬持って帰る?』

 女神様が言う。

「レモンじゃ自分で食べらんないじゃん!父ちゃんと母ちゃんが喜ぶだけじゃん!」

 少年が地団駄を踏む。

 もう、女神様ったら、こういうタイプが大好きなんだから。

 からかって遊ばないの!


「桃か林檎を持って行きなさい」

 この子の好物は葡萄。満点取ったら葡萄をあげよう。

「やったー!!いつものオッチャンだと、その程度では努力が足りないとか言って、絶対にくれなかったんだぜ」

 子供の努力を認めないだと?

 アイツ、送り返して正解だったな。



「持って帰りますか?食べて行きますか?」

 執事な熾天使が少年に問う。

「家族で食べたいから持って帰る!林檎は妹の好物なんだ!」

 良い子ね、本当に。

 林檎を2個あげてください。


 メイドな権天使が木から林檎をもいで、少年に渡した。

 2個渡された事に驚いた後、満面の笑みでお礼を言う少年。

 来た時と同じように、駆けて行った。

 子供は元気だなぁ。



     

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