第45話:招かれざる客



 家庭教師の先生と神様達の対面も終わり、今度は神様達が抜けて、クラスメート達と先生でのガールズトークで盛り上がった。

 最後には皆で「女の子が生まれたら、家庭教師をお願いしますね」と言い、先生が「あらあら、体がいくつあっても足りないわ」何て笑っていた。


 ここでお開きになれば感動的だったのに、そうならないのがやはり私の結婚式なのね。



「親を結婚式に呼ばないとは何事だ!」

「育ててあげた恩も忘れて!」

 う~ん。育ててもらった記憶は無いのですが。

 お金かな?一応お金を出してくれていたからかな?

 でもそれは、私の愛し子としての加護が領地を繁栄させていたから、むしろ感謝されても良いはずだ。


 それにしても、ここに来るまで1ヶ月は掛かるはずよね?

 招待状は勿論送っていない。

 日程も知らずに来て、結婚式当日に到着って、凄いわね。執念のせるわざ


 元両親の登場である。



「私の後を追って来たのかしら」

 先生が困惑気味に呟く。

 どうやら両親は結婚式の事で、先生に探りを入れてきたらしい。

 先生は常識も分別もある方なので、適当にはぐらかしてくださったそうだ。

 だから多分、先生を監視させていて、家に居なくなったからと辺境領地に来たのだろう。


 元両親が来た事実より、それによって先生が責任を感じているのが嫌だわ。

 こんな事になるなら、断られても神様の瞬間移動で迎えに行けば良かった。




『なぜ呼んでもいないむしが居る?』

 何処かに出掛けていた神様達が戻って来て、第一声がコレですよ。

 もうね、視線が本当に害虫でも見ているのかって位の冷たさデスヨ。

 冷たい……とは違うか。

 もし私が神様にあんな目で見られたら、一生立ち直れないと思う。


 なのに、招かれざる客二人は図太かった。

「これはこれは!カーリーがお世話になっておりますな」

 何様!?

 招待客は招待状に「神様が現れても平伏しなくて良いし、花嫁の父として扱ってほしい」と書かれていたので、普通にしているが……。

 通常は神様には平伏ひれふすわよね?


「ちょっと!カーリーにばかり構わないで、アモローサとイザベラにも色々してくださいね!二人も聖女なのですから」

 はあぁ!?

 何言ってんの?馬鹿なの?

 国を滅ぼしたいの!?

 神様怒らせて、何がしたいの?



『蟲は蟲籠から出られない方が良いのう』

 元両親に手をかざすと、神様が静かにそう呟いた。

 目の前の元両親が、消えていた。

『領地に送っておいだぞ』

 笑顔の神様は、嘘は言っていないだろう。


 その後、無事に披露宴が終了し、私達の結婚式は完了した。

 自領に帰る人、辺境伯邸に宿泊する人、観光するつもりの人、それぞれ自分の馬車へと乗り込んだ。


 神様からの引出物として、果物全種が箱で配られていた。

 普通の果物より、全然日持ちするらしい。

 とても美味しかったし、皆、本気で喜んでいた。

『芽は出ないからな』

 おそらく種を植えようと思っていたであろう人が残念そうにしていた。


 全員帰ったはずなのに馬車が残っていて、あれ?と首を傾げたが、元両親の馬車だった。

 馭者が戸惑っているけど、無視した。

 好きなだけ帰って来ない主を待つが良いわ。

 そしてその後は、1ヶ月も掛けて伯爵領まで帰るのね。

 宿泊代とか諸々の経費を出して貰えると良いわね。

 その間伯爵家は、1番乗り心地の良い馬車が無いわけね。

 へっ!ざまぁみろ!



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