第38話:罪深き者達




「それでは皆様、ご機嫌よう」

 カーテシーをする。

 あら、でも平伏しちゃってるから、見てもらえなかったわ。

 そして何事かと、続々と集まって来る使用人達。

 こんなに沢山居たのね。

 全然知らなかったわ。


「そういえば、馭者もまさか天使?」

 いつも学園まで送迎してくれた、私にも親切に接してくれた馭者。

 キラキラの馬車の中に、使用人用で行くのは、彼にとっても屈辱的で恥ずかしかったはず。

 それなのにいつも笑顔だった馭者。


『いや、彼は天使では無いの』

 天使では無い?

 何となく言い方が引っ掛かるのは、気のせいじゃないわよね。

 だって、神様関係じゃなかったら「知らない」のはずだもの。



『さて、帰るか』

 えぇ?ちょ、馭者は?馭者の話は?

 ニッコリと笑う神様は、教えてくれる気は無いらしい。

「……はい」

 まぁ、最初の目的は果たしているし、良いとしよう。


 因みにこのやり取りの間も、まだずっと平伏しているのよ、元家族と使用人達。

 普段しない姿勢だから、元両親なんか体をプルプル震わせてる。

 明日は筋肉痛かな?



「ちょっと~何で誰も迎えに出て来ないのよ!」

 遥か遠くで甲高い金切り声がする。

 アモローサが帰って来たみたい。

 平伏させたいけど、あの悪臭は嫌だなぁ。

『うむ。確かに予想以上に悪化しておるのぅ。此奴等が不快な思いをするのは自業自得だが、他の人間には迷惑なだけだ』


 そうなのよ!

『関わりの度合いにより、悪臭を感じる程度を調節しよう』

 それでお願いします!



 後日、アモローサの悪臭の感じ方で、周りの人間の罪が判るようになった。

 残念ながらアモローサのクラスメート全員、全滅だって!

 女子も含めて皆して、アモローサの嘘を信じるか、嘘と知りながら利用していたみたい。


 常に窓を全開にして授業を受けてるらしいけど、普通の悪臭じゃないからね。

 無駄だと思うわよ。



 使用人だけじゃなく、領民も結構な人数が駄目人間だった。

 え?さすがに驚いたわ。

 元家族や元親戚が、領内にも私の悪評を流してくれてたのね。


 商人とか、伯爵家に近しい者ほど駄目人間みたい。

 私は知らなかったけど、出入りの商人は「領主の所の次女は、地味で頭も悪いクセにアモローサ様を虐めて、自分ばかりが贅沢をしているらしい」とか「我々の税金でドレスや宝飾品ばかり買っている」とか流していたんですって!


 酷くない!?


 悪い噂を広めると、その分イザベラやアモローサがいっぱい物を買ってあげてたみたいね。



 それから、グルーバー辺境伯邸に帰ると、あの馭者が出迎えてくれた。

 いつの間にかこっちに雇われてたの?と思った瞬間、やはりピカッて!ピカッってなった!


 凄~く美しい羽の生えた、真っ白い馬になって、天高く飛び立って行きましたよ!

 天馬って!素は人型ですらなかったの!?

 もう、驚き過ぎて、逆にどうでも良くなったわ。



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