第31話:勘違いも甚だしい
翌日、脳筋馬鹿な弟の方と、両親代わりの神様と女神を交えてお見合いをする事にした。
コッソリ見ていたらしい女神様がバージルを気に入ったようなので、急遽決まったのだ。
『挨拶をする前に「手洗い」!しかも全力の善意!馬鹿過ぎる!!』
姿を現した女神様は、それこそ挨拶もせずに、腹を抱えて爆笑していた。
『初めまして。旦那様の愛し子カーリー』
ひとしきり爆笑した後、女神様はとても美しく挨拶をしてくれた。
隣国の辺境伯夫妻と次男のバージルと、私達親子(?)での昼食会が、こちらの辺境伯領地のレストランで催された。
進行役は辺境伯夫妻。
敢えてアンブローズ様は呼んでいない。
なぜなら、脳筋二人が揃ったら、空気を読まずに二人で戦闘談議に花を咲かせるのが予想出来たからだ。
それにしても、なぜコイツが居るのかしら?
呼んでないわよね?エイベル様?
私の怪訝な表情に気付いたのか、辺境伯が……ええと、うちの方の辺境伯だから、グルーバー辺境伯ね、彼が私達へと言い訳を始めた。
「最初に婚約の話は、エイベル殿へと来たものなのだろう?この前、挨拶だけで帰ってしまったそうだね。それがバージル殿の乱入のせいだと聞いて、ね」
おやおや?どこかで誰かに都合よく捻じ曲げられてるわね。
バージルが乱入する前に、私は帰る気満々だったわよ?
どんな理由があれ、エイベル様の初対面の第一声が私を褒めた言葉への否定でしたからね。
「この前はバージルが失礼しました、カーリー嬢」
エイベル様が私へ見当違いの謝罪をしました。
コイツ、自分の私への失礼な発言は無かった事にしてんだな。最低。
「えぇっと、俺の勘違いで、ごめんなさい」
バージルも謝って来ます。
叱られた犬みたいにシュンっとしちゃってて、大きい体が小さく感じるわ。
「バージル様。例え親切からでも、女性にはもっとデリカシーを持って接してくださいね」
「すみません。騎士が場を離れるのは、手洗いくらいしかないので」
あぁ、なるほどね。
来てすぐ立ち上がったから、まさか帰る気だとは思わなかったと。
うん。私、バージルとなら一緒にいて楽しく過ごせると思う。
今まで、外面ばかり良い人間と一緒に居たから、裏表の無い脳筋馬鹿なバージルが安心する。
あ、脳筋馬鹿って呼んでるけど、私も女神様も、本当に馬鹿だとは思って無いわよ?
本当の馬鹿は、騎士にはなれない。
本当の馬鹿はね……
「おい!嫡男の私を無視して、なぜバージルなんかに話し掛けてる!お前は私へ結婚を申し込んで来たんだろうが!」
うん。こういう人よね。
「私が、貴方へ、結婚を申し込んだ?」
グルーバー辺境伯を見ると、首を左右に振って否定している。
そんな私に気付かずに、エイベル様は話を続ける。
「第二王子殿下から、辺境伯嫡男の私へ、隣国の令嬢と会ってみないかって話が来たんだ。それが殿下とアンブローズの婚約者の友人とくれば、結婚するしかないだろうが」
はあぁ。なるほどね。
私が権力を盾に、結婚をゴリ押ししてきたと思っていたのか。
もしかして、私がアンタに惚れてるとか思っちゃってる?
それで自分が優位に立とうとして、自分は結婚を望んでいないけど、しょうがないからお前と結婚してやるんだって見せようとしたのかしら?
本当に馬鹿ね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます