第30話:余計なお世話




 私が席を立ったら、焦ったのはバーナビーと呼ばれた第二王子と、アイリス様の婚約者の方の辺境伯子息だ。

 そういえば色々ありすぎて、まだ名前も聞いてなかったわ、アイリス様の婚約者。

 義兄になるのに、ごめんなさい。


「す、すまないカーリー様!コイツは、照れたりするとわざと酷い事を言ったりしちゃうけど、本気じゃ無いんだ!」

 ふうぅ~ん。だから?

「だから何です?初対面で暴言を吐く男など、私達が許しませんわ!貴方もです!庇う前に、まず注意をするべきでしょう?アンブローズ!」

 アイリス様が婚約者を怒鳴りつけた。

 そして彼の名前が判明。アンブローズだ。


「バーナビー?貴方は何か言い訳は?」

 マーガレット様がにこやかに婚約者に問い掛ける。

 ちょっと怖い。

「いや、今のは確実にエイベルが悪い」

 バーナビー王子が緩く首を振った。


 よし!帰ろう!

 そう思った時だった。

 バーンと扉が開かれて、男性が一人飛び込んで来る。

 既視感。


「隣国の美人辺境伯令嬢が婚約者探しに来てるんだって!?俺にもチャンスちょうだいよ!」

 如何にも脳筋な少年が飛び込んで来た。

 少年?

 行動とか言葉遣いとかで騙されそうだけど、同い年くらいだよね。



「あれ?何で立ってるの?お茶?あ!手洗い?メイド呼んでくるよ」

 私の返事を聞かずに、入って来た扉をまた出て行った。

 ポカーンと眺めてしまった。

 猪か?猪突猛進過ぎるだろう!?


「重ね重ねすまない。あれはこのエイベルの弟で、バージルだ。悪い奴では無いのだが浅慮で」

 バーナビー王子が謝ってきた。

 ここでもあの失礼な男は何も言わない。

 アンタの弟でしょう?



「お待たせ!」

 バージルがメイドを連れて戻って来た。

 何か彼には敬称を付ける気がしないので、心の中では呼び捨てで良いか~。

 メイドは訳が解らず目を白黒させている。

 しかも息があがっていて、ちょっと苦しそうだ。

「急がないと、他人の家だと勝手が違って時間かかるでしょ?」

 本気で心配そうに言われて、思わず笑ってしまった。


 この上なく無神経で失礼な事を言われてるけれど、彼の中には親切心しか無いのだ。

 勘違いで連れて来られたメイドは可哀想だが、私の中で弟の株は少し上がった。

 だって、面白い。

 少なくとも、兄の方よりもずっと良い。




「はぁ!?仲が良いのは弟の方ですって!?」

 マーガレット様がバーナビー王子を締め上げる。

 あ、あれ?私の知らないマーガレット様が居る。


 今は辺境伯邸にバーナビー王子を連れて戻って来ていた。

「だって結婚相手として紹介って言ったら、普通嫡男だろう?エイベルも幼馴染だし、別に仲が悪いわけじゃない」

 でも、仲が良いのはバージルなのね。


 それにしてもバージルとかバーナビーとか、アンブローズとエイベルとか、似たような名前で覚えにくいわね!

 


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