第29話:そう上手くは……




 アイリス様とマーガレット様の実家と、ここ辺境伯には、神様の祝福がされるらしい。

 てか、もうされてる?

 うちの伯爵領が加護だったので、もっと良い事があるのだろう。

 私と仲の良かったクラスメート達には加護。


 普通にしてた人達には、何も無い。

 そして想像通り、私を蔑ろにした人や直接何かをした人には、それなりの報いがあるんですって。

 でも同情はしない。

 人を陥れようとしたのに、反撃される覚悟は無いのかって話よね。


 人を呪わば穴二つ。

 ちょっと違うか?




『隣国の第二王子とやらと、愛し子の嫁ぎ先も確認せねば!』

 神様ノリノリですが、まだ私とマーガレット様とアイリス様の他愛無い話レベルだったので、隣国には何も知らせてないんだけど?

 神様が来るまで、お二人のご両親や婚約者とその家族も知らなかったのよ?


 そう考えると、本当に申し訳無い……事も無くも無い、事も無い。

 ……ちょっと皆様、肝が据わり過ぎでは?


 さっきまで汗ダラダラでアタフタしてたのに、今は男性陣は何やら画策してるっぽいし、母親三人は優雅にお茶を飲み始めたわ。

 これが国の中枢ちゅうすうになう、高位貴族なのね。

 あ、中枢じゃ無くて、むしろ端っこか?

 なんてね。




 翌日、隣国の第二王子と件の辺境伯子息と面会する事になった。

 まずは当事者とって事みたい。

 親まで関わると、私が断る事が出来なくなるから……らしい。

 公爵と侯爵と、こちらの辺境伯の配慮みたい。


 実は、気に入らなかったら国王が出て来ようとも断って良いと、神様には言われていた。

 私も最初からそのつもりだった。

 聖女になったからって、私は私で変わらない。

 なので、まずは聖女という事を隠して会う事にした。



 格好良い男の人だったら惚れちゃうかも〜キャッ!……何て思ってた時が私にもありました。


「初めまして。マーガレットとアイリス嬢の友達だとか?とても美しくて驚いたよ」

 にこやかに挨拶してきたのは、マーガレット様の婚約者の隣国の第二王子。

 ザ・王子様だ。

 絵に描いたような、金髪碧眼。

 辺境伯子息程では無いけど、鍛えられた肉体。


 そしてもう一人、私の旦那様になるかもしれなかった隣国の辺境伯子息。

「美しい?目は大丈夫か?バーナビー」

 はあぁ!?

 いきなりの暴言に、私は無言で席を立った。


 この話は、無かった事にしましょうね。



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