第27話:女神降臨




 王宮の1室。

 とても醜い争いが行われていた。

 本当に醜いわ。

 この国の王家って、段々と質が悪くなってるわね。



「何が聖女だ!こんな奴等を王族に迎えられるか!次女はどこだ!本当の聖女を第二王子の婚約者にするから連れて来い!」

 まぁ、旦那様の愛し子を「連れて来い」ですって。

 何様?


『この国の王は、神より偉いのか!』

 雷を室内に落としてやった。

 まぁ、みっともないこと。

 いい年してシモの管理も出来ない人ばかりね。


 汚い床に触れたく無いから、空中へと姿を現すと、一人だけきちんと跪いてこうべを垂れていた。

 王太子ね。

 感心、感心。



 さてと、ここからが本番よ。

『私は愛を司る女神』

 自己紹介。

『そして結婚も私の管轄なの』

 嫉妬とか愛に関する全てだけど、それは今はいいわね。


『貴方は王として、その娘達の結婚を確約したわ。それをくつがえす事は、私が許さない』

 顔面蒼白になったのは、王だけでは無いわね。

 水死体アモローサと結婚しなきゃいけないかも、と公爵子息は半泣きだわ。


 第二王子は「聖女と結婚」だから、カーリーと結婚するつもりなのでしょうね。

 あからさまにホッとした顔をしている。


 でもね、そんなわけないでしょう?

 貴方よね?学園でアモローサにカーリーの動向を伝えていたの。

 正確には、貴方に命令された側近。

 カーリーは同学年に第二王子が居る事も知らなかったみたいだけど。



『何か誤解してるようだから教えてあげるわ。そこの二人にも、主神の加護があるわよ。貴方達の言う聖女って事ね』

 嘘では無いわ。

「え!?」

 第二王子は絶望を顔に浮かべ、伯爵夫妻は喜びを浮かべたわ。

 馬鹿みたい。


『神官も読み上げていたでしょう?「愚かなもの、心を磨け」「醜いもの、心を磨け」と。神の試練は、言い換えれば神の祝福であり、加護よ』

 達成出来れば、だけどね。

 これ程の試練だと、もはや呪いだけど、それは敢えて言わないであげる。



『愛の女神の名において命ずる。第二王子はアモローサと、公爵子息はイザベラと婚姻するように』

 うふふ。絶望した第二王子と公爵子息の顔ったら!

 可笑しいったらないわね!!


 伯爵夫妻としては、厄介者が片付いて万々歳かしら?

 家は聖女のカーリーが継いでくれるとでも思ってるんでしょうね。


 お馬鹿さん。

 私の旦那様がそんなに甘いわけないでしょう?

 散々愛し子を邪険にした貴方達を許すとでも?


 この世界で1番我儘で横暴なのは、主神である旦那様よ。



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