第25話:愚者は嘆く(判定後) ※母親視点




 アモローサが!私の自慢だったアモローサが!


 あの醜い姿は何!?

 髪色や仕草や声など、面影が残っているのが尚更残酷よ!






 最後まで、うちの姉妹が呼ばれなかった。

 それは、イザベラかアモローサが聖女だという事だと、当主である夫と家族席で喜びあった。


 途中、娘達と仲の良い人やその姉妹が酷い判定を受け、周りの目が冷たくなったが、地味で愚図な邪魔者が先に呼ばれ、状況は一変した。


 やはり私の娘が聖女だったのよ!



 前評判で聖女確定だった我が家は、判定式の前に王に呼ばれていた。


 王太子は無理だけど、王族の誰かとの婚約を確約されたの。

 さすが自慢の娘達だわ。

 聖女じゃ無かった方の姉妹も、聖女の姉妹なのだから、王族へ嫁がせると。


 聖女は第二王子へ、もう一方は公爵家へ。


 顔合わせも済んでいて、第二王子と公爵子息は、イザベラとアモローサにデレデレだったわ。



 それなのに選ばれたのが醜い邪魔者ですって!?

 ありえないわ!判定が間違ってるのよ!!



 神が直接降臨するなんて、今までの王国の歴史にも、それどころか世界的に見ても、初めての事だという。

 王陛下が会場入りした。


 舞台上を見て、私達家族を見て、話が違うって顔をしている。


 知らないわよ!

 1番驚いてるのは、私達家族よ!



 そこでイザベラが神に意見したわ。

「まだ私達の判定が終わっておりませんわ!」

 さすがだわ!神に物申ものもうせるなんて!

 他の人では無理よ。きっと貴女が聖女なのね。


「聖女が一人とは限りませんよね!」

 私の可愛いアモローサは、可愛いだけじゃなくて頭も良かったのね!

 そうよ!そのとおりだわ!


 ほら、神だって娘二人を舞台へ呼んだもの。




 判定式が終わり、会場には私達家族だけが残った。

 床から立つ事も出来ない私達夫婦と、舞台上にまだいるイザベラとアモローサ。


「国王陛下がお呼びです」

 王宮騎士に言われ、応接室に連れて行かれた。


「ねぇ、お菓子とかないの?私、ケーキが食べたいわ。苺の載ったケーキよ」

 イザベラがソファに座るなり、騎士に言う。

 これが完璧な才女と呼ばれたイザベラなの?


「私、カーリーお姉様に脅かされてたの。ああ言わないと、酷く殴られると思って私……」

 騎士に向かって上目遣いで涙を流しているアモローサは、昔の姿なら騙される者も居たでしょう。

 しかし今は……騎士は大袈裟な位、距離を開けたわ。

 それもそうでしょう。

 アモローサの醜さが、更に酷くなったもの。



 そんな時、部屋に王家が入って来た。

 ノックもせずに、扉が乱暴に開け放たれる。

「何が聖女だ!こんな奴等を王族に迎えられるか!次女はどこだ!本当の聖女を第二王子の婚約者にするから連れて来い!」

 叫んだ王陛下の後ろには、第二王子と公爵子息、そして王妃と王太子が居た。



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