第21話:神の判定




 こんいん。こんいんって婚姻だよね?

 私の認識が間違ってるわけじゃないよね?

 婚約者もいないのに、いきなり婚姻の話かい!


 ニュアンスから、神様と結婚するのでは無いみたい。

 そこで、アイリス様への言葉を思い出す。

 確か「計画を進めよ」だ。

 私を辺境伯の養子にして、隣国の辺境伯に嫁がせる計画の事だと思う。

 だって「三人仲良く」だし。


 そっと神様を見上げる。

『ん?どうした、愛し子よ』

 あぁ、人外の微笑み。

 目が潰れるかと思う程、麗しいわ。



 誰もが呆然としていたら、突然扉が勢いよく開いた。

 王家専用の扉から、転がる勢いで会場入りしたのは国王陛下だ。多分。

 会った事無いけど、頭に冠被ってるし、妙に高そうな服にマント姿だ。

 おそらくだけど、聖女判定が終わったら、偉そうに挨拶するつもりだったんだろうな。


 それが神様出現で、焦って出て来たってところか?

 後ろからお付きの人?が追って来た。

 そして帯剣している人達は、護衛よね。


 あ、陛下と目が合った。

 その予想外ですって表情は、何?

 急いで会場を見渡してるけど、まさか一国の王ともあろう方が、噂に踊らされてイザベラかアモローサが聖女だと思ってたの?

 ……思ってたみたいね。




 私から視線を外した神様は、会場を睥睨へいげいする。

『で、何時まで眺めている?いつからこの国の人間は神と対等になった?』

 神様の言葉に、陛下は顔を青くする。

 唯一跪いていた神官の横へ走って移動し、同じように跪く。

 そして会場内へと怒鳴った。

「馬鹿者!こうべを垂れぬか!」

 会場内の平民どころか高位貴族まで、全てが膝を突いた。


 ある二人を除いて。


 さすがだわ!

 国王陛下ですら跪いてるのに、カーテシーすらしないで舞台を睨みつけてるもの!



「まだ私達の判定が終わっておりませんわ!」

 イザベラが叫んだ。

 いや、叫ばなくても聞こえるけどね。

 会場内は、衣擦れの音さえしないくらい、シーンとしてるし。

「聖女が一人とは限りませんよね!」

 今度はアモローサだ。


 神様がここに居て、二人を歯牙しがにも掛けない時点で解りそうなものだけど、根拠のない自信に満ち満ちていたからなぁ。



『ここに来るが良い』

 神様が二人を呼んだ……けど、笑ってない。

 え?怖っ。

 なのになぜか、嬉々として舞台に上がってくるイザベラとアモローサ。


『水晶に触れるが良い』

 神様に促され、イザベラが水晶に触れた。

 なんか、光ったけど、色が汚い。

 汚れた窓ガラス越しの太陽の光って感じ。

『神官、読み上げろ』

 神様に言われ、神官は「失礼します」と言って立ち上がり、水晶を覗き込んだ。


「愚かなもの、心を磨け」

「え?」

 イザベラが一言発したまま、動かなくなった。

 気のせいじゃなければ、先程水晶が発した光に、イザベラが包まれたように見えた。


「イザベラお姉様、退いて!」

 そんなイザベラを突き飛ばし、アモローサが水晶に触れる。

 また汚い光だわ。

「醜きもの、心を磨け」

 神官が水晶に浮かんだ文字を読み上げる。

 やはり気のせいじゃ無かった!

 水晶から発せられた光は、今、アモローサを包みこんだもの。


 そしてアモローサは、この世の者とは思えないおぞましい姿に変わった。



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