第19話:聖女判定式 後半




 貴族の番になり、男爵家の令嬢が呼ばれた。

「上より同格が良いと出てます。金運が高いので、商売に向いてるとも」

 身に覚えがあるのか、男爵令嬢はうんうんと頷いていた。

 婚約の打診が複数来ていて、本人と両親の意見が分かれていたのだろう。

 明るい表情から、彼女は同格の男爵に嫁ぎたいのだろう。



 次に呼ばれた子爵令嬢は、見覚えがあった。

 イザベラの取り巻きに居た女だ。

「特に何もありませんね。勿論、聖女ではありません」

 今までに無い判定結果に、会場がザワつく。


「木に縁があるとか、何かないんですか?平民にですら良い事を言ってたじゃない!」

 子爵令嬢の婚約相手は、木に関係ある土地か仕事なのだろう。

 神官は無言で首を振り、子爵令嬢は警備に舞台から降ろされていた。



 次に呼ばれたのは、私を陥れようとした男の姉だ。

 アモローサの取り巻きで、私を泥棒呼ばわりして処罰されたうちの一人。

 それの姉である。

 私と同学年なのだが、聞こえよがしに「弟は嵌められた」と私の悪い噂を流していた。


「繁栄は無い、自業自得。弟を恨め?」

 神官が浮かび上がった文字を読み上げながら、首を傾げた。

 これでは祝福どころか、呪いである。

「何よそれ!」

 いくら騒いでも判定は変わるわけもなく、やはり警備に退場させられた。




 判定が進むにつれ、ある法則に気が付いた。

 イザベラの取り巻きは、祝福されない。

 それどころか、人によっては悪い判定が出てる。

 アモローサの取り巻きの身内は、軒並み悪い判定だ。

 特に私に直接害をなした者の姉妹は、将来結婚出来るのか不安な位の判定が出てる。


「気のせいでしょうか。カーリー様に仇をなした人達の判定が悪くありません?」

 マーガレット様がコッソリと耳打ちしてくる。

 それに無言で頷いた。

「良い判定の方は、カーリー様と良好なクラスメートですわね」

 アイリス様もコッソリと話し掛けてくる。


 私の悪い噂を信じないクラスメート達は、皆「豊作が約束される」とか「治水を整えれば繁栄する」とか、良い結果が出ていた。

 表面上は同情するふりをして、陰で悪口を言っていた女は、勿論悪い判定だった。


 神様ってちゃんと見ているものね。



「アイリス・サウスリンド嬢」

 アイリス様が呼ばれたわ。

「良縁。そのまま計画を進めよ。三人で仲良く」

 え?これって、昨日のあの計画の事?

 舞台の上のアイリス様も驚いている。

 更に水晶玉が光る。

「神の祝福を」

 読み上げた神官も驚いている。


 震える足で帰って来たアイリス様を、私とマーガレット様で支える。

「ねぇ、もしかして聖女って」

 アイリス様が言いかけた時、マーガレット様が呼ばれた。


「マーガレット・ウェストラン嬢」

 マーガレット様が背筋を伸ばして舞台へと上がって行った。

「良縁。全て上手くいく。三人で仲良く」

 アイリス様と似たような判定に、会場がもしや?と想った時、やはり水晶玉が輝いた。

「神の祝福を」

 神官の言葉に、会場から拍手が起こった。


 アイリス様もマーガレット様も、王子達の婚約者候補なのだ。

 しかし彼女達は、この国の王族には嫁がない。


 それよりも悪い判定の出た人数を思い出しなさいよ!

 成人前後の貴族女性の半数以上が判定無しか、悪い判定なのよ?


 まぁ、面白可笑しく噂話を広げた人達なので、自業自得としか言いようがないんだけどね。



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