第18話:聖女判定式 前半



 公爵家の美味しい朝食を食べて、ゆっくり過ごしてから体をピカピカに磨き上げられた。

 マーガレット様とアイリス様もピカピカに磨き上げられて、完璧な淑女になって三人で顔合わせをする。


「凄い!カーリー様素敵!」

「マーガレット様もアイリス様も素敵ですわ」

 二人は私より早く支度が終わっていたらしく、一足先にお互いを褒めあったようだった。

 優雅なマーガレット様に、清楚なアイリス様。

 そして自画自賛になるが、華やかな私。


 イザベラやアモローサなんて目じゃないわね。




 公爵家の馬車で会場へ着くと、既に殆どの参加者が揃っていると思われる人数が居た。

 その中で何か盛り上がっている一角があった。


「イザベラ様に決まってますわ!」

「類稀なる頭脳は、神の加護のお陰ですわよ!」

「あら、天使のような容姿のアモローサ様が選ばれますわ」

「本当に神の芸術作品みたいにお可愛らしい」



 恥ずかしいわ、本当に。

 あんな会場中から注目されていて、選ばれなかった時の事は考えて無いのね。

「みっともない」

『本当に』

 すぐ耳元で声が聞こえて、慌てて振り向いた。

 マーガレット様とアイリス様は、私の前を歩いている。

 しかも、今の声は男性のものだった。


 会場内は殆ど女性で、男性は壁際にいる警護か、一ヶ所に集められている親族だけ。

 私の耳元で囁やける位置には、男性どころか女性も居なかった。


 空耳?

 それにしては、妙にハッキリ聞こえたけど。




「これより、聖女判定式を始めます!」

 入口の扉が閉められ、一段高い位置に進行役の人と、神官と水晶玉が出てきた。

 水晶玉は、人の頭位あるとても大きい物だった。

 透明度が高く、ヒビやくもりが一切無い。

 凄いなぁ……と眺めていたら、水晶の中に名前が浮かび上がってきた。



「サタケ村のマーリー嬢、前へ」

 どうやら今回の候補者の名前が浮かび上がってくるようだわ。

 呼ばれた女性が前に出て水晶に触れると、水晶が光る。

 え?一人目でもう確定?


 と、思ったら神官が「水に恵まれます。農家は貴女の適職ですね」とマーリー嬢へと微笑んだ。

「ありがとうございます」

 嬉しそうに微笑んだ彼女は、農家へ嫁ぐ事が決まっていると話して舞台を降りた。


 それから次々と名前が浮かび上がり、判定されていく。

 どうやらここまで態々来た労力に対して、神からのお礼として聖女でなくても判定してもらえるようだ。


 鍛冶師の娘で緑に縁が!?と思ったら、恋人がきこりで親に結婚を反対されていたりとか。

 神様に後押しされたら、親も許すしかないよねぇ。

 神様なりの祝福?なのかしら。


 平民が全て終わり、次は貴族の令嬢の番になった。

 ここまでは聖女は見つかっていない。

 視界の端に、ニヤニヤと笑っているイザベラとアモローサが見えた。

 あの顔は「私が選ばれるのに無駄な事を」ってところかしらね。



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