第14話:転機




 聖王国から、うちの国に「神からの啓示があった」と連絡がきたのは、そんな時だった。


 いや、正確には全世界へ連絡がいったようだけど、確認のしようが無いからね。

 とにかく、国をあげてのお祭り騒ぎになった。

 その内容は……



『この世界のどこかに、聖女様が誕生しておりました。成人前後の女性です。

 近々聖王国神官が調べに行くので、当日、該当女性を城に集めておくように』



 国の成人前後の女性って、何人居ると思ってるの?

 馬鹿なの?聖王国。

 ……と思っていたら、そもそもの該当者は「城まで日帰りが出来る距離に住む」という前提だった。

 曖昧だけど、城に行くのに夜中に家を出発するのは、常識的では無い。

 朝日が昇ってから、だろうな。


 うちは朝食を食べてから出発しても、日帰り出来る距離だ。

 そして成人前後の女性に、三人共該当する。

 面倒臭いから、行かなくても良いかなぁ?って思ってたら、マーガレット様からお誘いがあった。




「聖王国からの発表見ました?」

 マーガレット様が楽しそうに言う。

「辞退出来ないかと思ってるの」

 私の言葉に、マーガレット様だけでなく、アイリス様も驚いている。

「それは駄目よ!もしカーリー様が聖女様だったら、国が聖王国に怒られるのよ?」

 いやいや、無いから。


「でも聖女でしょ?きっと清らかで優しい人だわ」

 私は、自分の性格の悪さを自覚しているからね!

 もっとも、あの環境で育って清らかで優しくなれたら、それは単なる鈍感な馬鹿だ。

 それか自分の世界に引きこもれるナルシストか。


「それに一人でお城まで行くのは面倒だわ」

 しかも絶対に使用人用のあの馬車よ?

 通学程度なら良いけど、城までの距離を乗るのは辛いわ。

「それなら、他に目的が有れば良いわね。前日にうちに泊まりに来て、当日は三人で一緒にお城へ行きましょう?」

 マーガレット様に提案される。

「あら!それは楽しそうですわね」

 アイリス様もノリノリだ。


 それなら行っても良いかなぁって、気になってきたわ。



「では、ドレスは三人でお揃いにしましょうよ」

 今度はアイリス様が提案する。

「でもうちは、私にドレス代を使ってくれないわ」

 姉と妹のドレスに、馬鹿みたいにお金をかけるはず。


「侯爵家から『娘がお揃いのドレスを作りたいと言ってるけど良いか?』と許可を求めるわね」

 アイリス様がニッコリと笑う。

 うん。それなら絶対に許可されるわ。


 マーガレット様もアイリス様も、さすが王子達の婚約者候補になる令嬢だけあるわ。

 一筋縄ではいかない、なかなかの腹黒さんです。

 そういうところも大好きですわ。



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