第12話:欲望が起こした事




 アモローサの取り巻きの男二人が脱落しても、何も変わらなかった。

 だから馬鹿は嫌なのよね。

 ライバルが居なくなってラッキー位にしか思ってないのかもしれないわ。

 そういう意味でも、イザベラの取り巻きとはタイプが違う。


 伯爵家の三女なんて、嫡男以外の男には価値が無いと思うけど、あれだけ見目麗しいと違うのかしら?

 婿入り先で愛人を持つ事が許されるとは思わないし、贅沢三昧なアモローサを隠れて囲うなんて無理よね?




「おねえさまが私のアクセサリーを盗んだのよ!」

 突然、というか、いつものようにアモローサがどこからともなく現れて、私を指差した。

 朝食時からこちらをチラチラと見ていたと思ったら、この髪留めを狙っていたのね。


 ハーフアップにされた私の髪は、細かい細工の施された髪留めで留めてある。

 その細工とは、マーガレットとアヤメをカーリーミントが囲っている、三人の友情を表したものだ。

 二人が特注で私の誕生日に贈ってくれたものだった。



「返してよ!」

 アモローサが叫ぶ。

「返すも何も、これは元から私の物よ」

 両親からのプレゼントならともかく、友人からの贈り物は間違いなく私だけの物だ。

「盗んで手にいれたのに、酷いわ!」

 アモローサが涙まで流し始めた。

 酷いのはどっちよ。


「とにかく、これは渡せないわ」

 私はアモローサを無視して歩き始めた。

 その時、取り巻きの男が私の髪にあった髪留めを掴んだ。

「アモローサ様に返せ!」

 男は私の髪留めを力尽くで奪った上に、私を突き飛ばした。


 そこは階段が側にある廊下だった。


 普通なら落ちる事は無い距離だった。

 しかし怒りに任せて私を突き飛ばした男の力は、私をよろめかせた上に、階段から落とした。



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