第7話:嘘と真実




 入学式の夜。

 アモローサの入学祝の内輪のパーティーが行われた。

 これは、姉の入学の時にも行われていたのだが、私はどちらにも出席していない。

 なぜなら、公の場に出られるドレスを持っていないから。


 本当に内輪のパーティーなので親戚しか来ていない。

 しかしそこでも、誰も私が居ない事を疑問に思わない。

 私が親戚の集まりに顔を出さないのは、もはや当たり前の事になっていた。

 長年掛けて両親が「カーリーは姉や妹に嫉妬し、出たくないと駄々をこねている」や「癇癪かんしゃくを起こして部屋で暴れたので謹慎中」など、自分達に都合の良い嘘を並べていたからだ。


 親戚の間でも、私は「出来の良い姉や可愛い妹に嫉妬する醜い次女」に成り下がっていた。



「カーリー様、お食事をお持ちしました」

 部屋で謹慎中私に、メイドが夕食を持って来た。

 彼女はまだ働き始めて3年の若いメイドだ。

 両親や姉と妹の洗脳に染まる前に私と接したからか、邸内での味方だ。

 後は学園への送迎馬車の馭者と、筆頭執事だろうか。

 まぁ筆頭執事は味方というよりは、キッチリと仕事をしているだけだけどね。


 まだ子供の頃、私のスープにゴミが浮いていた事があった。

 食べるのを躊躇ちゅうちょしていたら、メイドが私に何も聞かず無言で下げた。


 その翌日、そのメイドと厨房の料理人が一人クビになっていた。


 それから、私を表立ってしいたげる使用人は居なくなった。

 そういえば、私の髪を乱暴に梳かしたメイドもいつの間にか居なくなってたなぁ。



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