第8話:過激になってきた嫌がらせ




 朝の通学は、2台の馬車ので行われる。

 伯爵家の紋章入の大きな馬車には、イザベラとアモローサが乗る。

 そして私は、上級使用人が使う馬車だ。

 まだ2台も伯爵家用の馬車があるが、1台は父が出仕する用で、もう1台は母が外出する用らしい。


 通学馬車は、学園に置きっぱなしになるわけでもないのに、母用の馬車を取って置く意味がわからない。

 しかも父も王宮勤めでは無いので、毎日出仕しているわけではない。

 たとえ何がしかの用事で出仕するにしても、私達の通学馬車が戻って来てからでも充分間に合う。


 ようするに、私に家族用の馬車を使わせたく無いだけなのだろう。

 あぁ、ムカつく。




 学園での私の立場は、ズルをして高成績を取り、妹を虐げる悪女に確定していた。


 ある時、食堂で食事をしていたら、頭からスープをかけられた。

「あぁ、つまずいてしまいました」

 それは冷めた物だったが、私は髪から制服から下着まで、全てスープまみれ。

 それなのに相手の女は、謝ろうともしない。


 本来、貴族令嬢が食堂で食べ終わった皿を下げる事などありえない。

 いらがらせの為に、態々手に持って寄って来たのは明らかだった。

 私はスープをかけた令嬢と、一緒にいる二人の令嬢を見る。

 実行犯は同じ伯爵家、残り二人は子爵に男爵ね。

 学年は姉と同じ3年生。


 間違いなく姉の取り巻きだ。



「何よ!態とじゃ無いって言ってるのに何睨んでんのよ!性格悪いわね!」

 伯爵令嬢が殊更大声で叫ぶ。

「イザベラ様なら絶対に怒らないのに」

 子爵令嬢も追従する。

 あの姉が怒らないわけないじゃない。

 実際にやってみなさいよ。


 まぁ、良いわ。

 今回貴女達を追い詰めるのは、私じゃ無いから。

「貴女がこぼしたスープが汚したこの本は、マーガレット公爵令嬢の私物です。今の言い訳が通用すると良いですね」

 私は三人に笑顔を向けた。


 先生に質問が有るからと、マーガレット様とアイリス様は遅れて来る予定になっていた。

 場所取りを兼ねて、私がお二人に頼まれて席に本を置いておいたのだ。

 因みに言わなかったが、アイリス様の本も汚れている。


「誰に非が有るか、大勢の目撃者もいますし、仮に嘘の証言がバレた場合の処罰も公爵家が相手となると、かなり重いでしょうね」

 私は、ニヤニヤとこちらを見ていた周りの生徒達を見回した。


 自分の価値がマーガレット様の本より低いと宣言しているようなものだけど、この三人の女に罰を受けさせられるなら、それもありだと思う。


 泣き寝入りだけは、絶対に嫌だわ。



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