第5話:数少ない味方




 姉が何度も私の事を貶める発言をした為に、実際の成績よりも私の立場は低かった。

 天才の姉を煩わせる上に、それを当たり前だと感謝しない、恩知らずな出来の悪い妹。

 そう言われていた。


 実際には挨拶もしない、他人より遠い間柄なのに、何を感謝しろと?



「あの女が例の?」

「イザベラ様のお荷物だよ」

 食堂で私を見て、コソコソと噂をされる。

 いつもの光景だった。

 同じクラスの二人の女生徒が、そんな私の側に寄って来た。


「カーリー様、一緒に食べましょう?」

「噂を鵜呑みにする愚か者など、放置して良いですわ」

 二人は噂をしていた上級生達を睨みつけた。 

 同じクラスの生徒は、担任のお陰で殆ど噂を信じていない。

 しかもこの二人は、上に兄や姉が居るそうで、学園が学年毎に試験傾向が違う事を身を以て知っていた。



 マーガレット公爵令嬢とアイリス侯爵令嬢。

 伯爵家のうちよりも、家格が上のご令嬢だ。

 二人と一緒に居る時は、絶対に姉は近付いて来ない。

 それが解っているからか、二人は何かと私を気に掛けて側に居てくれていた。


「高位貴族は、本来噂に振り回されてはいけないのよ」

「実際に自分の目で見たものか、きちんと精査したものだけを信じないとね」


 二人の口振りだと、私の伯爵家での扱いも知っているのかもしれないわね。

 それでも、馬鹿にするでも同情するでも無い。


 家に居るより、学園でこの二人と居る時の方が落ち着くわ。


 家ではイザベラが両親に「マーガレット様とアイリス様に、カーリーが纏わりついて迷惑を掛けていて恥ずかしい」と嘘八百を並べていた。


 それを真に受けて、夜会で侯爵や公爵に父がお詫びを申し上げて、赤っ恥を掻けば良いのに。

 さすがに目上の人にいきなり話し掛ける愚行はしないか。

 残念。



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