第4話:学園での生活




 私を私個人として見てくれる人は、ほんの一握りの人だった。

 その一握りに担任が入っていたのは、不幸中の幸いだったと思う。

「貴女は決して不出来では無いです。自信を持ってくださいね」

 学園祭で父との会話の後、担任は私にそう言ってくれた。


 それでもイザベラの影響力というのは、私が想像していたよりも大きかった。




「私の妹なのに、学年トップも取れないどころか、3位にも入れないなんて恥ずかしいわ」


 次の試験の成績が貼り出された時、何故かイザベラが取り巻きを引き連れ1年生の順位表を見に来て、そう言ったのだ。

 私の成績は5位だった。


「イザベラ様の妹なのに!?」

 取り巻きらしき女生徒が大袈裟に驚く。

 何かの舞台のようだ。


「あれだけ試験前に付きっ切りで教えてあげたのに」

 溜め息を吐きながら、嘘も吐き出すのね。

 邸内でイザベラと言葉を交わした記憶は無い。

 一方的に嫌味を言われるだけだ。

 挨拶もまともにしないのに、どうやって勉強を教えたと言うのか、この女は。


「妹さんに時間をいて差し上げて、それでもイザベラ様はトップなのですね」

「さすがはイザベラ様ですわ」

「そこまでしていただいたのに、妹様は……残念ですね」



 いつの間にか、私はイザベラに試験対策を教えてもらい、しかも付きっ切りで勉強を教えてもらった事になっていた。


 ズルい女。

 しかもそこまでしてもらってるのに、トップを取れないと馬鹿にされるようになった。



「不正防止の為に学年毎に試験傾向は全然違うのに、なぜこんな変な噂が広がったのか」

 担任が噂を信じない公明正大な人で、本当に良かったわ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る