第四章

 こんなところまで来るのは初めてだった。クレドリアで生まれて、育ってきたけど。北側にはあまり行ったことがない。

 このクレドリアは南北に広く、子供の足ではそのすべてを見ることはできない。それに僕は両親が死んでる。だからこんなところに来る理由なんてないし、そもそも来れない。北側は田園風景が広がっている。そこに急に現れる大きなビル。このあたりの畑の管理をしている「スラべスト・コーポレーション」という会社らしい。

 どこに向かってるかは、知らない。

数十分後

「ついたで!」

そうして到着したのは、大きなお屋敷だった。周りの田園風景には似合わない程近代的な……

モダニズム建築っていうんだっけ。そんなでっかいお屋敷。

「ここがうちらの家や」

『ここで暮らすんですか?』

「せや、世間的にはボスが母親で、おれがお前の兄ちゃんや」

ここで、僕の新しい生活が始まった。


「それで、何の話なの? ファクトリの若頭さん」

とあるカフェの店内で話し合いが行われていた。

「しかし、組長さん自らいらっしゃるとは……」

「あら? そう指定してきたのはどこのどいつ?」

店内にはお互いににらみ合う男女二人だけ。

「あんたら、セイレーンって知ってるよな?」

「ああ、あれよね。船乗りが歌で誘われて食べられちゃうーみたいなやつ」

「とぼけてんじゃねぇよ」

緊張が走る。

「じゃぁお薬のお話じゃないのね。あなたたちお得意の」

「ちげぇ、今一番欲しいのはセイレーンだ」

「うーん。無理」

しばらくの沈黙

「何があっても?」

「ええ、渡す気はないし、あの子を利用する気もない」

「あ? じゃぁなんでガキなんてかくまってるんだ?」

「私のポリシーに反するの。私以外の女子供は巻き込みたくない」

「あんた、ぬるいんだな」

「ええ、みんな仲良しよ」

「はぁ。では交渉は決裂ってことで」

周りから黒服の男たちが大量に出てくる。

 お互いに大量に銃器を持ち出し、硬直状態になる。

「チッ、お前ら。出てくんなって言ったろ」

男は目の前にいる敵から目を合わさず子分たちを叱咤する。

「みんな、『待て』よ」

「ここで事を起こすのはあんたも俺も得策じゃない。それに、俺が親父のメンツをつぶすわけにはいかない。決着は後々つける。だが、我々はセイレーンを力づくでも奪い取る。首洗って待っててください」

そう言い残しカフェを後にする。

「良し」


 テレビからニュースが流れている。

『本日13時ごろ、ギャング「ファクトリ」の幹部一名が銃撃により死亡したとの情報が入ってまいりました。そのほか死亡者3名、重軽傷者は7名です。警察からの情報によるとギャング同士の抗争である可能性があるとのことです。周辺の住人は警戒を……』

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魂の言葉 里芋の悲劇 @satoimonohigeki

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