第三章
銃声が鳴り響いた。
「あ? なんでガキ一人も拉致って来られねぇんだよカスがよぉ!」
「ひぃ!」とよれたスーツの男がふがいない声を出す
「まぁまぁレイスの伯父貴、何もそこまでしなくったっていいじゃねぇですか。なんせ相手はバケモンなんでしょ?」
「そ、そうです……周りの人間が急に操られるように……」
もう一度銃声が鳴る
「おめぇらは死ににいったんだろぉ? なら死んで来いよ、死んでもそのバケモン捕まえてくるのが仕事だろぉ?」
「は、はひぃ」
そこにこの場で一番若く、派手な格好をした人物が現れる。その場にいる全員が頭を下げる
「ああ、そんで? ガキは?」
そう発した途端、空気が凍る。
「あ、ああ、親父。 今やってるとこだ、心配しないでくれ」
「ああ? 昨日にはとっ捕まえてくるはずじゃぁなかったか?」
と、マテバオートリボルバーを構える
「い、いやぁ? あれだよ、あのガキ、ライフルと手を組んでやがったんですよ」
ざわざわと組員たちがざわめく
「なぁ、兄さん。 それ、初耳なんですけど」
「せやなぁ! うちらには隠してたっちゅーことか?! なぁ? 兄さん」
声のデカい男が白いスーツの男に噛みつく
「外野は黙ってろ」
全員が凍り付いたように固まる。リボルバーの銃口は脳天を指している
「ですが親父、それが本当ならめんどくさいですね。 レイスの兄貴が突っ込んで奪って来いなんて言うので今、ライフルとうちは緊張状態です。変に刺激すると戦争になっちまいます」
眼鏡の男が親父と言われている男に近づく
「おめぇ、バカなんか?」
と銃を強く握りなおす
「い、いやちげぇんだよ。いや、こいつが悪いんすよ。こいつが本屋でうまく拉致って来ないから……だかr」
リボルバーから轟音が響く。
「レイス、てめぇには失望した。もういらねぇ」
全員の目線が親父に向く。
「お前が失敗した奴か?」
「は、はひ」
「こいつに感謝しな、お前の責任取ってくれたぜ」
腰が砕け、倒れこむ。
「おい、こいつをほかの部屋に連れてってやれ」
「ウス」と、子分たちが連れていく。
「そんで兄貴? どうすんだよ、セイレーンは」
リボルバーをホルスターにしまいながら部屋を出ていく。
「兄貴!?」
「でけぇ声出すなよケイスケ。ルイ、レイスのケツ拭き頼んだぞ」
と言い残し、部屋を出ていく。
残された組員たちは死体の片づけを始める。
「そんで、親父からの指名だけど……どうすんだ? 頭」
「言われたことをやるまでです。親父はセイレーンを捕まえて来いと言った。ならそれを全力でやるまでです」
「さすがは若頭さんだなぁ? きっと親父にいっぱい媚び売ったんだろうなぁ~」
「ケイスケ兄さんこそ、親父にしっぽ振って付いていってるだけじゃないですか」
「あ?」と眼鏡の男……ルイを睨む
「それで、当てはあるんですか? 頭」
「ああ、ある。交渉するんですよライフルと」
「あ~あ、とうとうバカになっちまったか!?」
はぁとため息をついた後。
「レイスの情報網はもうありません。なので、正確な位置を割り出すのは至難の業です」
と言い、ホワイトボードにペンを走らせる。
「まず、我々が欲しいものはセイレーンの彼です。そして、それを超える条件をライフルに与えます」
「あ? それだとこっちの損じゃねぇか」
「あの、話は最後まで聞いてください。ライフルが欲しいものは、恐らく金と土地、そして人員。ライフルはここ数年で出てきた新参です、なら我々が人を出します」
「どこから?」
「そんなの、うちの下部組織からに決まってるでしょう」
「はぁ? うちの組員を渡すってのかよ」
「そうです。土地ごと渡します。そして土地=金なのでこれで全ての条件をそろえられます」
「それでよぉ。そうするとしてもよ、どこの土地をやるんだよ」
地図をホワイトボードに貼り、ペンで区分分けをする。
「ここがうちとライフルとの境界です。ならこの境界をくれてやるんですよ。それでそのまま事務所も人間も一緒に渡してしまいます」
「それでよ。 まだ俺たちが損してるのは黙ってていいんだな?」
「セイレーンは大人になってからが本番ですから」
「あ? ガキのままじゃだめってことか?」
「まぁそれは連れてきてから説明してあげますよ」
「ああ!? そこ勿体ぶるのかよ! いい女紹介するからよ!」
「はぁ兄さんは僕といつからの付き合いなんですか? そんなのに乗らないって知ってるでしょ」
と言って出ていく。
「ギル! アポ取っとけ」
「ウス!」
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