第11話


 夏が来た。湿った風が暑い。空気が暑い。この地球は俺を殺しに来ているに違いない。

「あー! 暑すぎんだろ!」

 風鈴がチリンと返事を返す。こんな日に限ってこの暑さを紛らわせるイベントが起こってくれない。誰か遊びに来てくれればこの暑さもちょっとは楽になるのに。

 そんなことを考えているとスマホの画面が点滅する

「んあ?」

通知を確認すると柊からだった

「んだよ~」

とか言いながら内心はウッキウキだった

柊:ちょっと面貸せや

ルイ:どしたん?はなしきこか?

柊:いつものとこで

ルイ:了解

Tシャツを着て自転車のカギをとる。

 いつものとこというのはちょうど両方の家の中心にあるコンビニだ

「うぃ~」

「おっせぇ~」

エナジードリンクを一気飲みした柊が立ち上がる

「なんかあった?」

「いや、部活も休みだし、暇だから」

「まぁそうだよね」

柊とはいつもこんな感じだ。目的もなく街をふらついて、駄弁りながら時間を過ごす。部活でも一緒だが、こいつといて飽きない。

「だから、ひとめぼれは再現性があるんだって!」

「何の話?」

飽きない理由はいろいろあるんだが、いつもこいつは急に話を始める。まぁそこが気持ち悪いというやつがいるかもしれないが、かかわってみれば面白いところだ

「人間は5~7秒目を合わせるとひとめぼれするらしい」

「それって、逆じゃなかったっけ」

「?」

鳩が豆鉄砲くらったような顔しやがって

「ひとめぼれすると5~7秒目が合うんじゃなかったっけ」

「そうなの?」

「何で急にそんな話?」

「いや別に気になっただけ」

と柊がうつむく。失恋でもしたのか?

「ほーん」

と無意味な返しをした。

「海」

「あ?」

「楽しみだな」

少し悲しげな声で言われたので、少し反応に困っていると

「ああ、そういえば。ラーメン」

「あ、えーっと。 なんのはなし?」

「覚えてないとは言わせないぞ!」

と元気そうな柊を見て、そんなことなかったか。とスルーした。

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