第7話

サイダーを飲みながら言った

「おれ、やっぱ好きだわ」

そうつぶやいた。

「いやそれ、一生分聞いたから」

金色のスチール缶の中身を飲み切った女性はあきれたように言った。

「おれ、ねぇちゃんのこと敵だと思ってるから」

「は? じゃぁ負けないけどいい?」

「いや、俺が勝つから」

「私に勝ったことなんて一回もないのに?」

「はぁ? あるし!」

「じゃぁ何で勝ちましたか?」

「いや、それは……」

「サッカーでもゲームでも頭でも勝てないのにねぇ」

口を閉じてうつむく。この女はなんでもできる。

 俺がまだ小さかったある日、俺はこの女に勝負を挑んできた。


         だが、全敗。


それはそうだ、小さなころの姉弟で姉に逆らうなど言語道断。かなうわけないのだ。

だが、この年になっても全敗なのだ。

 俺は高校生になってもこの女に敵わないのだ。もう24になるこの女に。

「じゃぁ要ちゃんは私がもらっていくので」

「はぁ? 絶対ヤダ」

「そう思うならもう言っちゃいなさいよ、別に悪い子じゃないんだし」

「でもいきなり言われたらきもいだろ」

「じゃぁあんたは後輩とかにいきなり告白されてキモイって思ってたんだ」

「いや、それは違うじゃん」

「何が違うの? 今更男同士だからっていうんじゃないでしょうね」

目をそらす。

だけど、実際そうだろう、俺は要のことが好きだけど。要はほかの女の子のことが好きなのかもしれないし、それこそほかの男がいるかもしれない。そんなの知らないけど、自分で考えてちょっとノイローゼになりそうだ。

「ねぇ? 聞いてんの? ほんとにあたしがもらっちゃうけどいいの?」

「ねぇちゃんなら任せられる」

「そういうとこ、何で大事なとこで弱気になるかなぁ」

仕方ないだろ! って言いたかったけどこいつにそんな心があるわけないから言わなかった。

「でも実際、弱気にもなるか~ 私はあんたのこと変だとは思わないけど、見知らぬ誰かが聞いたらおかしいっていうかもしれないし、じゃぁほんとにわたしがもらっちゃったほうがいいのでは? 要ちゃん可愛いし、私好みだし。いいじゃん!そうしようよ」

「絶対ヤダ! ねぇちゃんには渡さねぇから!」

そういって弟は自分の部屋に飛び込んだ。

「我の弟ながら、可愛いとこあんじゃん。まぁ要ちゃんは渡さないけどね」

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