第6話

「席替え」それは、戦争である。

いや、正確にはこの学校……いや、この教室の「席替え」のことである。


 このクラスの「席替え」は実力主義である。このクラスの担任である数学教師っを井の発案で数学の小テストを月に1度行い、そのテストの上位から順に自分の好きな場所に決めることができる。そして、1位から5位までの上位者特権として、ディレイすることが可能である。その方法は一人指定し、そのあとに決定する。または順位を指定し、そのあとにディレイすることが可能。同順位だった場合、前回の順位にのっとって選択順を決定する。

(例)A子とB男は同点で同じ順位だった。だがA子は前回7位でB男は20位だったため、A 子が先に席を決定した。

と、上記のようになる。上位者特権は同点だった場合、前回の順位を参照し前回の順位順で決定する。

 つまり、最初から最後まで1位だったらどんな状況でもアドバンテージをとることができる。それを現実にしている人間がこの20人の中で1人いる……それが、斎藤要その人である。俺としてはそれは好都合だった。絶対に1番最初に席を決定するため、できるだけ上位できれば2位3位あたりを狙えばいい。まぁそれができたら苦労はしていない。このクラスには学年上位9名がいる。斎藤要を含めた上位十名はこの順位を崩すことはできない、そんな高い壁として高くそびえたつ十名を「十傑」と誰かが呼んだ。問題はそのうちの9人がいることではない。そのうちの中にレナもいることなのだ。彼女は何というか、若干バカっぽい恰好をするが、頭がとてもよろしいのだ。やっぱり人は見た目じゃない。そんなレナはいつも2位から5位までをウロウロし、いつも要の隣に居座るのだ、この女は。あいつを今回は超えられたのか、俺の勝負はそこだ。

「よし、返すぞ! 今回も例のごとく上から順に返すぞ!」

まず最初はやはり要だった。その時、イレギュラーが起こる

「あ、僕最後でいいかな」

斎藤要はディレイをした。これは最大の誤算だった。

「じゃ、斎藤は最後でいいな」

「はい。いっつも最初に決めさせてもらうし、これやってみたかったので」

そしてこの時、俺は思いつく。要が最後にディレイをするなら俺は、そのあとにディレイすればいい。まぁそれも俺が5位に入れれば、なんだが。

 ここでまたイレギュラーが起こった。柊が3位だったのである。そしてこいつもディレイを宣言したしかも最悪なことに

「んじゃ、俺はルイの後でいいかな」

なんて言いやがった! そしてさらなるイレギュラーが俺を襲う

「じゃぁ4位 榊原さかきばらレナ」

俺より先にレナが呼ばれたのである。そして、

「んじゃアタシも、要の後にしたいけど、要はそれでいい?」

「うん、いいよ」

先を越された、この場合俺の順位のほうが下なのでディレイの優先順位が下がる。

「じゃ、同点4位相馬ルイ。上位特権滑り込みセーフだ」

ここで俺はどうするのが正解なんだろうか、俺はどうしても要の隣になりたい!何としてでも!どうする?考えろ、足りない頭を回せ!

「それじゃぁ、俺は……」

運命に賭けた。

 結果は俺の隣は埋まることなく要の番が回ってきて、要は俺の隣に座った。勝った。

 俺は賭けに勝った。

「1か月よろしく」

だけど要は知らない。俺が隔月で隣を狙っていることを

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