目覚めの章
第1話 見知らぬ世界での目覚め
少女は夢を見ていた。もしかするといつかの記憶だったのかも知れない。そんな
『世界の――を――。世――解放して……』
風が体を
少女は声に導かれるように向かおうとするが、なぜだか体がふわふわとまるで宙を漂っているかのような感覚で、自分の意志で体を自由に動かすことができなかった。少女はそれに気が付くと諦めたかのようにふわふわとした感覚に身を任せた。
『私に逢いに来て……』
今度こそハッキリと聞き取れたと思ったと同時に、ぷっつりと糸が途切れるように少女の意識は閉ざされた。夢すら見ない深い眠りに落ちるよう静かに
「星奈!」
誰かが自分の名前を呼んでいるのだろうか。明るい青灰色の肩にかかるミディアムヘアーの少女。柊其
「ん……うっ……なに?」
その
「……森? どうして私こんな所に……」
自分の置かれた状況に戸惑いながらも星奈は立ち上がる。立ち上がった瞬間、ズキリと軽い頭痛に襲われ顔をしかませるが自然とすぐに収まり改めて思考を巡らせる。
「確か声が聞こえて……ダメ、なにも思い出せないな」
ついさっきまで見ていた夢のような出来事のことをなんとなく思い出せる程度で、どうしてこの場所に自分がいるのか見当も付かなかった。いつ、どうやって、どうして。記憶にないこの場所で自分が目覚めた理由を思い出そうとしても成果は一向に得られる気配はない。
自分は日本という国で高校に通う普通の……そう、なんら特筆するべきことはない普通の女子高生だった筈だ。そんな当たり前の記憶しか思い出せない。尤も、その記憶にもぼんやりと
「はぁ……ここで突っ立ってても仕方ないか」
星奈は深いため息を1つ
彼女の身を包んでいたのはブレザーと呼ばれる衣服。
「綺麗……」
周りを囲む木々が
キラキラ輝く水面に誘われるように近づき、池を覗いてみると透き通った水によって水底がハッキリと見え、太陽の光が底まで届いて不思議な文様を映している。
ふと、星奈は水面に映った自分の姿に違和感を覚えた。
「私……髪の毛こんな色だったっけ……それに目の色もなんか違う気がする」
まるで薄曇り空のような青みかかった少し癖のある髪が風に揺れ。ナイルブル―の瞳には水面に反射する光が映し出されている。そんな自分の姿がおぼろげな記憶にある自分の姿とどこか違うと星奈は強く感じていた。その違和感の正体は一体なんなのか思い出そうとしながら水面に映るその姿と対峙する。
その時だった。池のほとりに立ち、水面を覗き込む星奈の背後に迫る影が現れたのは。
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