第14話 初任務②
「なにがオススメですか?」
「んー、能力との相性もあるんだけどニールはどういう能力なんだ?」
「幻覚を見せることができますが、特に攻撃に特化した能力じゃ」
「いや、素晴らしい能力だ。
それにカラス隊は確かに国防機関だけど俺たちは人を殺めない機関だって自負している。こういった武器も念のためで、殺める必要がないなら攻撃性の高い能力は必要ないんだ。
それより 君のように幻覚で誘導できるならそれにこしたことはないんだよ。」
初めてこの能力を他人から褒められた。
今までは兄しか知らなかったし、兄から一般の人は能力は仕えないんだと聞いた時には驚いた。
それまでは皆が各々能力を持っていて自分も一般的だと思っていたから。
それがまさか元感染者だけの特別な力と同じだなんて兄に言われるまで予想もしなかった。
兄からの話を聞き元感染者でないのに能力があるだなんて知られては他人から疑われ疎遠にされることは他人と接触したことがない私にでも分かることだった。
兄からはあれほど隠すように言われた能力だが、ここで無能力だと言えば本当にニールなのかと疑われかねない。
「でも無防備というのも危ないね…銃くらいは所持した方がいい」
今兄としていられるのも体型を隠したりできるこの能力のおかげだが、正直自分の能力はあまり好きではない。
そして武器を選ぶというのもまだ武器の種類もわからない自分には選ぶにも基準がなく複雑な気持ちで武器を眺めた
「なにか気になったものある?」
森での狩を何度かした経験からナイフは手になじんでるが銃などの飛び道具は使い方さえわからない。
棚にあるナイフを何本か見てみると刃物まで漆黒で中央に文字が書かれているナイフがあったからそれを手に取った。
クルクルとナイフをまわしてみるがそのナイフは不思議と手によく馴染む。
まるで昔から使っていたかのようだ。そんなことってあるだろうか?
「そんなのあったかなぁ。もちろんそれもつかって大丈夫だから申請しておこう。」
ナイフの刃物は光の具合で赤黒く光沢をみせた。
面白くなり何度も光の屈折で色が変わるのを私が眺めているあいだ、アレックスは銃が並ぶ棚の前で何かを探しているように奥の引き出しを開けていた。
「あぁこれこれ!これなんてどうかな?飛び道具もひとつは装備しておいた方がいいだろう」
そういいながら渡された銃はマシンガンだった。
私はさっき銃を使うのも初めてだと言わなかっただろうか?キラキラと目を輝かせるアレックスに嫌だと即答できずやんわりと断りを入れた。
「…流石にこれは目立ちすぎませんか?」
これはロケットランチャーなんじゃないかと思う位大きいサイズのマシンガンだった。
やんわりと断ったつもりがすっかり銃に夢中になったアレックスには届かずマシンガンの魅力を色々と説明された。
「目立つくらいがちょうどいいとおもうよ。
少なくともメンバーのように攻撃系の能力ない場合の自衛にはこのくらい目立つものがあった方が安心だとおもう。
それにこういう大きいサイズのマシンガンだったら正確性をそこまで重視されないしとりあえずどこかには当たる。
たださすがにこれを持って走り回ると言うわけにもいかないだろうからこのベルトを使うといい。」
どうやらこの長い説明は武器がラストだったようでそう言われ持たされた重たいマシンガンと用意された装備を両手でかかえ部屋を出た。
このマシンガンを背負うベルトも一緒にもらったが、正直使い方もよくわかならないからベルトがあるとは言え持ち歩きたくないと思い部屋で一番自分から離れた場所にある扉の横に置いた。
そして部屋の隅とはいえ必要最低限しか置いてないシンプルな部屋ではかなり存在感を放っているマシンガンを恨めしそうな顔で睨んだ
そしてもう一つの武器は自分のベットのサイドテーブルに置いた。
月明かりで赤く耀くそのナイフはまだなにも傷つけていないのに、もう血を吸ったかのような不気味な色合いを見せる。
光にかざすととてもよくわかるがこのナイフの色は黒ではなく極めて黒に近い赤だった。
今日来たばかりだというのにあれよあれよというままに明日出動となり、一月にも匹敵するような出来事が1日の間に私に起きた。
兄は今どうしているのだろうか
感染者とバレていないだろうか
月明かりが差し込む部屋はやけに明るくて外の景色さえもしっかり眺めることができた。
今夜は満月なのだろう。他の星々が己の輝きを遠慮がちに抑えている。
外のそんな様子をながめていたら眠くなるだろうと思っていたが、その晩は全く眠ることができなかった。
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