第9.5話 休日2『輝夜編』
気持ちの良い朝陽が手にした本を照らす。この部屋に女性らしさはあまりなく、書斎に近い。要所要所に可愛らしいデザインの物が飾ってあるが主張が激しいわけではないので、良いバランスで部屋のコーディネートがなされている。
この部屋の主、
十三ページ程読み進めた所で机に置いておいたスマホから通知音が鳴る。どうやら
栞を挟んで本を閉じ、スマホを手に取り
「はい、どうぞ」
「お嬢様、朝食の用意が出来ました」
「わかったわ、今行く。ありがと、
黒のロングテールコート着こなす白髪頭の老人、
彼の退出後、スマホを手に後を追うように食堂へ向かう。食堂には複数名の使用人が席一つ一つの後ろに付き、その席には彼女の家族が既に着席していた。この家自体、瓦などを用いた伝統的な日本家屋なこともあり、席と言っても高さのある椅子ではなく座布団に背もたれがついているタイプで、旅館などでよく見かけるような物となっている。
この家の当主、
静かに正座をし、正面の父へ顔を向ける。
「おはよう、お父さん」
「おはよう、輝夜。学校はどうだ」
「問題ないわ、順調よ。それより、例の件はどうなってるの?」
頂きます、と呟き食事に着く。朝食は日本食で
「未だ調査中だ。わかったことも特には───」
「あるんでしょう?」
「......地下施設【禁忌資料保管所】にあったはずの一冊が盗まれたそうだ」
娘にはどうにも嘘がつけないらしい。
「ッ?!」
【禁忌資料保管所】とは防衛大臣の管轄にある一般人には極秘であり非公開とされている、歴史、魔法、大犯罪等が資料として収められている場所のこと。
六代貴族は公安ではないものの、身分で言えば天皇家の次とされいてる為、その当主の地位にいない者でも存在を知ることも入ることも可能ではある。
事の重大さが理解できる彼女だからこそのリアクション。しかしもっと重要なのは何が盗まれたか。
「盗まれたのは、歴史資料第六章【月闢式】だ」
「......」
ただただ彼女は、俯いたまま無表情だった。
事の重大さを噛み締めているのか、はたまた何も考えられていないのかはわからないが、じっと話の続きを待つ。
「現在調査中だが、例の奴らと無関係とは思えない」
「ええ...また何かわかったら教えて」
「ああ」
普通の家庭とは違う、重たい空気が流れる朝食となった。
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