第三章 身近な恐怖
第10話 一限目:魔物歴学1
4月20日。初任務を明日に控え、
第六章『遺伝型適正』。魔法にも異能力と同様に遺伝型と継承型がある。適正属性が少なからず両親の影響を受けるのではという話。現在分かっている範囲では、ほぼ100%遺伝するというのが世界共通の見解であり、認識である。実際、
「そろそろ時間か」
一限目『魔物歴学』。主に魔物に関しての授業で、歴史と絡めて魔物について学んでいく。普通科には無い科目の一つで、そっちでは『総合歴学』として歴史を中心に大きな事件、巨大災害に関わった魔物が簡素に歴史の偉人の様に紹介されるくらいだ。
「では、授業を始める。号令」
起立、気をつけ、礼。流石にここは普通科との違いはないようだ。
「今日は教科書の7ページ、第二章魔物生誕と根源魔法の第一、魔物の根源から進めていく。
「はい、魔物は魔法、ひいては魔術の始まり、起源であり──────」
魔物の生命の根源、それは魔力。人間には、血液、魔力、エーテルそのどれかが欠けていては命を保つことができないと、チャールズ・ダーウィンによって決定付けられた。
だが魔物は血液という物はなく、魔力が液状化した物が身体を巡っている。それこそ、純粋な魔力と言っても過言ではない。
では、魔物はどう誕生したのか。今でもその議論は続いているが、有力な説が二つある。
一つは、全ての魔物の祖先が卵から孵り、その第一の種を生み出した。様々な洞窟や地層、古代遺跡に壁画として描かれることが多いのがこの説。
もう一つは、元々は純粋な魔力だった。次第にその魔力は人間や動物、虫といった生命体に憧れを抱く様になった。そうしてその願いは叶えられ、様々な魔物が産まれていった。
どちらかと言えば、前者の方がそれらしい説に思えるだろう。後者は宗教の教典に載っている様な、神学の要素が絡んできている。だがなぜ両者が拮抗しているのか。それは、未だ『魔』よりも謎多き元素、エーテルの存在故だろう。
兎に角、魔物は魔力その物である、というような話が教科書二ページに渡って綴られている。
これらの内容は中等部で習う為、教科書の前半部分はほぼ復習に近い。とはいえ、
「では、おさらいついでに問題だ。原初の魔物はある神話の生物に似ていたとされている。その神話の生物とは何か。わかる者は挙手を」
───これは簡単だな、答えはオリュンポス十二神のアポロンとギリシャ神話に登場する半人半馬のケンタウルスの様、だな
中等部一年で習う問題。壁画にて神々しい衣類を纏い、右手には華美な装飾がなされた弓。下半身は馬の様に筋骨隆々で勇ましい姿が描かれている。
「よし、
白縁眼鏡の黒髪ポニーテールの少女───
「オリュンポス十二神のアポロンとギリシャ神話に登場する半人半馬のケンタウルスの様、です」
「よし、正解だ。この問題は俺達探索者には常識だ、絶対忘れるな」
これくらいのことがわからなくては色々な組織への入隊試験には合格できない。まあ、特例もあるが。
「日本が魔物を魔物と初めて呼称したのは、1853年に黒船来航と共に伝わった。向こうでは3世紀頃から戦術の一端を担っていた錬金術士達がそう呼び始めている。日本ではその呼称がなされるまで、もののけ、妖怪などと呼ばれ、それを討伐する武士や者達のことを、モノノフと呼び、魔物と呼ぶ様になってからは今まで混ざって呼ばれていた様々な種が、精霊や妖精と区別される様になったわけだ」
「最初に確認された魔物は、当時Bレートとされた【ウラガン・プルミエ】が一番始めに発見され、風属性の魔力特性を持っている事から名付けられた。見た目は不死鳥を思わせる様な姿で、全長27メートル。烏のような真っ黒い色をしていて、眼は紅く鋭い。それが今はSレートに引き上がった。理由は何故か、
頬杖をつく
「理由は確か、当時の魔法と現代に使用が許可されている魔法がかなり違うからだったかな」
「正解だ。当時は流石に闘級なんかもないから、かなり適当に強さを決めていたみたいだ」
当時使用されていた魔法の殆どが現在は禁忌指定されている物ばかり。その為昔と今とでは奴らの強さの指標が全く違うため、レートにもかなりの差が出ているわけだ。
「さて、ここからは少し領域に関する話も絡めていくぞ」
エーテルの影響により領域と呼ばれる世界へ繋がることができる。簡単に言えばパラレルワールドに繋がってると思えば理解しやすいだろうか。
地球や人間、全ての生命体には小さな波動があり、それが一致している為にその世界に存在していることができる。だが、エーテルが波動に干渉し座標が書き換えられることでそこに特異点が生まれ、ズレた座標の別世界へと繋がるゲートができ、それが領域と呼ばれる。ここの地球座標は全てが0:0:0で
正直この手の話は
と、ここまで
「まあここら辺は学者にでもなりたい奴が覚えておけばそんなに問題はない...テストには出るがな」
溜め息と共に出たその言葉は生徒を不快にするには十分すぎる効果を持っていた。
───まあ探索者になる上で理解してないと駄目なとこではあるからな
一見馬鹿そうに見える
一時間半の授業を終えて十分の休憩時間。生徒達は次の授業の準備をしたり友人と会話をしたりしていた。
「
「ああ、あれか」
「うん、今日の放課後とかどうかしら?二人は大丈夫だって」
「了解、放課後行こうか」
「うん、じゃあ二人に伝えておくわね」
───天宮って可愛いスマホケース使ってるんだな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます