第11話 二限目:魔法歴学1
二限目は魔法歴学、魔物歴学の魔法バージョン。こちらは実技ではなく、魔法とは何かその深淵に迫る───まあそこまでは行かないが、そういった具合で進んでいく授業。
魔法の起源とは魔術であり、魔術の起源は魔物に行き着く。つまり魔物とは魔法における究極の生命体と言える存在なわけだ。魔物が使う攻撃その全てが魔法であり、それを人間サイズに改良しているのが現代にまで伝わる魔法。魔物レベルの魔法というのは現在開発出来ておらず、各国の魔法開発に携わる研究機関は現在も新魔法の開発に勤しんでいることだろう。
「それじゃ魔法歴学の授業を始める、号令」
授業開始のチャイムと同時に先の授業と同じく担任の
「まず魔法とは何かについてだ。魔法とは魔物が持つ業を人類が人間サイズに作り替え、なんとか使用できるようにし、それを更に発動しやすく扱いやすくなった物が魔法だ」
主に禁忌に指定されているのは魔法ではなく改良のしようがなかった魔術。それはいわば、深淵に迫りすぎた物。深淵に迫りすぎた結果、魔物に近しいレベルに達してしまい、周囲への影響が凄まじいものとなってしまった。
「初めは魔術と言われ黒魔術、白魔術の二種類に分類された。そこから基本的六属性の分類が追加され、それと同時に白・黒ではなく光・闇の呼び名へと変化した。無属性はその当時存在せず、魔法と呼称が変わったその時に無属性が生まれ、魔力魔法というのができたとされている」
紀元前一世紀頃を境に西洋魔術における重要な魔術師が誕生する。ピタゴラス学派の聖人アポロニウスはエフェソス───現在のトルコからペストを追い払い、吸血鬼ラミアを退治したなどの逸話を持つ。グノーシス派シモン・マグスは魔術師で、幻術を用いて病を癒し、死者を復活させた逸話を持っている。ここらの古代思想が西洋魔術の基礎になりはしたが、それが本流になるまでルネサンス───十四世紀から十六世紀頃まで待たなくてはならなかった。
だが、魔法の改良は既にその時から始まっていたようで、呪術的要素のある魔術は人道的に良くないとされ魔方陣を用いて簡略化のされた扱いやすい物を求めて、その結果魔法が作り出された。
「ここで問題だ。魔法の開発には多くの魔術師が挑戦した。そんな中、初めて魔法を使い、魔導王と呼ばれた人物の名前とその年はいつか」
───これは俺も知らないな
彼とは反対側に座る女生徒が挙手をし起立して答えた。
「名前はクリミナ・トラベドール。1851年に初めて魔法を使用し魔物の討伐に成功しています」
「正解だ。
日本の開国と同時に西洋文化が伝わり、戦闘に関することも多く伝わってきた。元々日本では魔術ではなく呪術や妖術などを使う陰陽師がいたが、モノノフ達はそれの使用を禁じられており、魔法が伝わってからはそのこともあってか魔法は広くモノノフ達の間で普及していき、逆に陰陽師達は衰退していってしまった。
「魔物が使用する力は究極の魔法と言っていい。現在人類の使用が許可されている中で、最もそれに近い物は魔力魔法に分類される魔力魔法【
無属性に近い存在の魔法魔力魔法。【
彼は魔法・魔術に関しては魔法学の本を読んでいるお陰か、思いのほかすんなり内容が頭に入ってきた。隣に座る
「わからないわけじゃないけれど、結構難しいわ。
「そうか?まだまだ全然余裕あるぜ?」
「結構頭良いのね」
「あ~まあそうかも?」
実際、中学の時の定期試験は全て学年一位の成績を収めていたくらいには頭が良い。まあそもそも政治家を目指していた様な人間が頭が悪くて良いわけがないのだが。
「魔導王が初めて使用した魔法は炎魔法【|進み続ける炎彗《ジャーマ・アセレラシオン》】で現在の上級魔法に分類される。その式を元に改造することで更に強力な魔法や使いやすい初級、中級の魔法を開発していった」
魔法は初級・中級・上級・超級・禁忌級のレベルが制定されており、禁忌級は禁忌指定はされていないが、禁忌に最も近いとされ使用には政府の許可が必要。学生の内に上級が扱えるようになればその後の探索者ライフはかなり優遇されていくことだろう。
「ここからは魔術に関する話をしていく。年代順にだ」
そこからは魔術に関する話が始まった。
魔術は呪術とほぼ同義であるとされ、初めは魔物や領界種に対しての物ではなく、本質は人を呪うことにあった。だが次第に間接的ではなく直接的でより魔物が持つ力に近い物を求め開発を続けた結果、呪いではない魔術が生まれ呪術師ではなく魔術師と呼ばれるようになった。
当時日本では呪術師や陰陽師が多くおり、魔術とは全く別の進化を遂げていた。だが、西洋よりもそれを神格化していた為、使用者にはかなり限りがあり、表に出ていないそれを扱う者もかなりいたそう。刀鍛冶の多くは呪術を扱うことができ、それを刀に込めることで妖刀と呼ばれる代物を造り出していたと言われており、現代の武具に刻む術式の大元はこれだと言われている。
授業終わりのチャイムが鳴り、
「今回はここまで、号令」
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