第7話
「とりあえず、過去に戻るときの注意点を伝えておくね。」
クロネコはそう言うと、淡々と説明した。
・過去に戻れるのは一週間(七日間)
・過去に戻るのに対価として寿命七年分を失う
・過去に戻っている最中に、現在に戻ることは原則出来ない
・過去に戻っているとき、現在の時間は止まっている
・過去で変えたことは現在にも影響するが、どのように現在に影響するのか誰もわか
らない
・過去から帰ってきたときに同じ場所に帰ってくるとは限らない
・過去に戻れることを誰かに話してはいけない
・過去の戻るタイミングは指定された時間である
・過去に戻っているときに死亡したときのみ、強制的に現在に戻され、過去に戻った
ことはなかったことになる。ただし、寿命を返すことはない
僕は、これらの注意点をしっかりとそのまま箇条書きにメモした。書き終わった後、一つの疑問が浮かんだ。
「寿命を七年分失うってことはどういうことだ?」
「そのままの意味だよ」
「えっと。僕はいつ死ぬかわからないだろ?あと七年生きる保証なんてないよ」
クロネコは、ああそのことね、という風に頷き答えた。
「寿命はもう決まっている。水野佑の寿命は…」
クロネコは突然、何かに顔を覆われた。
「聞きたくないよ!なんだよ突然」
クロネコがモゴモゴ何か言っている。多分話せと言っている。僕は睨みながらそっとクロネコの口を覆っていた手をどけた。
「あのな、タイムリープする人には寿命を伝えないといけないんだ」
「まだ行くとは言ってない」
「あぁ、そうだったね。まだ言ってなかったね」
全部説明しなさいよ
「そもそも、なぜ僕の寿命を知っているんだ」
「君についてはほどんど知っているよ。あれ?ドクロの指輪はもう飽きたのかニャー?」
「うっ…うるさい…」
何もかも知られている恐怖。こんなの一生体験したくなかった。ふと腕を触るとブワーっと鳥肌が立っていた。体は正直にその恐怖と感じている。
でも、『寿命を知っている』ということは、クロネコには僕が死ぬ時が分かっているということだ。それが少し引っかかる。
「寿命を知っているって言ってたけどさ。もしも明日、僕はトラックに撥ねられて死ぬかもしれない。なら、僕の寿命は一日以内。つまり、事故だったり、殺人といった予期せぬ死を、その『寿命』は考慮しているのか?」
クロネコは、あー、と言った後に、何かに納得したのか頷きながら答えた。
「まずな、『寿命』っていうのはひとりひとりに定められたものなんだ。なんだけど、事故や殺人といったのは例外。まあ、寿命がその年齢ってだけで、その年齢で死ねるとは限らないよ。運命は俺にも分からない。つまり、七年分失うってことは、その人が生きるであろう7年間の寿命を失うってこと」
そういうことか。
「どう。興味沸いた?」
「うーん」
僕は腕を組みながら周りを見渡した。どこかにモニタリングカメラがあるかとさっきから一応探しているが、さすがに見当たらなかった。
「百聞は一見に如かず、か。」
クロネコは僕に近づき、手をの胸にあてた。
「何だよ」
「ドキドキしすぎ。体は正直だね」
舌を少し覗かせた後、クロネコはそのまま目を瞑った。いつの間にか、僕も目を瞑っていた。
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