第2話
「はい。全員いるね。今日は特に連絡することはありません。気温の寒暖差に気を付けて、風邪をひかないように、そして体調管理をしっかりするように。それでは、朝のホームルームを終わります」
「起立。気を付け、礼」
次は2年D組で授業だ。教室から出ようとしたとき
「水野先生」
と呼び止められた。振り返ると、生徒の一人である中野がいた。
「どうしたの?」
「ちょっと相談があって」
進路のことかな。確か、中野はまだ進路希望調査の紙を出していなかった。
「分かった。放課後でもいいかな」
「はい。全然大丈夫です」
「じゃあ、放課後に教室に残っておいて」
中野と別れて、三階にある二年D組のクラスに向かう。
「それでは帰りのホームルームを終わります」
「起立。気を付け、礼」
帰りのホームルームを済まし、生徒が教室掃除をしている中、一旦職員室に戻り、用事を済ませてから再び3年A組の教室に戻る。教室に入ると、中野は自分の席に座っていた。視線が上の空だった。
「お待たせ。ごめんね、待たせちゃったね。」
「いえいえ、大丈夫です」
中野は、いつも活発な女の子で、元気がない姿はあまり見せない子だ。そんな中野の隣の席に腰掛ける。
「それで、相談っていうのは進路のことかな。そろそろ受験する大学決めた?」
中野は総合型選抜や指定校推薦を使わず、一般で受験することは親の意向で決まっていた。
落ちたら大学に進学できない、といった不安の中で精神力を鍛える。推薦に逃げて、一般受験の経験がないまま社会に出でも、生きていくことは出来ない。この子には社会で活躍でき、みんなから頼られる子になってほしい。というのが、3年生に進級してから初めてした三者面談でお母様から言われたことだ。
自分も受験を経験したことで、人間として成長できたと感じている。なので、すべてを否定することはできないがさすがに考えが偏っていると面談中に思った。「推薦は逃げ」といった考えは、これから試験形態が変化していく中でステレオタイプとなっていくだろう。
「えっと…」
気まずそうに俯く。
「まだ決めてないのか。でも、中野は模試の成績いいし。特に英語はこの学校で上位だ。後からでも方向転換できるから、じっくり悩んでいいと思うよ」
「いや、あのもう決めてるんですけど」
「あぁ。そうだったのか。え?」
中野は、俯いていた顔を上げた。
「今日は、進路の相談じゃなくて、別の相談でして」
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