第9話  商人の息子のアラン

 アランは、とても魅力的な殿方に仕上がっておりました。

 茶色だった髪は、はちみつ色の金髪に、瞳は知性で輝いてましたわ。

 とても高い教育を施されているのでしょう。


 ガクガクと震えている、あたくしにアランは言って来ましたわ。


「来年、学院を卒業したら、ミレーユと結婚するよ。それまでには片付いてて欲しいな~」


「あなた、今はアルテア人てどういうことなの?お家は?リンディフ子爵家の一人息子でしょう?」


「あ~子爵家の事だね~~売ったよ」


「はあ!?」


 あたくしは意味が分かりませんでした。


「アルテアの大富豪が、金の次は名誉が欲しいって言いだして、大金でリンディフ家の家名を買ったんだよ。

 そのお金を元手に、父はアルテアで不動産屋を始めたのさ。父には貴族の家名を維持できる才能は無くても、商才はあったらしくて、おかげで僕はアルテアの王立学院なんて金のかかる所に行かせてもらえてる訳。」


 アランは笑って言いました。


 あたくしは汚らわしいものを見るようにアランを見てしまいましたわ。

 家名を売る?

 先祖伝来続いて来た、貴族の称号を商人に売るなんて、あたくしには考えられることではありません。


「君に理解されなくても、良いんだよ。ミレーユも、君の父上、母上の分かってくれてるのだから」


「いいえ!!お金があるなら、子爵家は買い戻すべきです。あなたには貴族の誇りはないのですか?」


「誇りでは、腹は満たされんだろ!?駆け落ちの時に散々空腹を訴えていたカミーユさん」


 アランがあたくしに、近付いて来て言いましたの。

 ミレーユもアランの後ろに着いて来ましたわ。


「お姉様、彼はわたくしの婚約者ですわ。横から奪わないで下さいな」


 ミレーユですわ。

 大人しくて、あたくしに反論などしたことのない、この子が……あたくしに向かって、横から喋って来るなんて!!三年間、銀の森で何があったというの?


「ミレーユ!!あなたは、あたくしに反抗できる立場だと思ってるの?」


 すると、ミレーユはアランの陰に隠れて言いました。


「キャ~!!アラン~お姉様は凶暴でしょう?」


「知ってるよ。ずっと前から」


 お父様とお母様は、注意もしてくれませんでした。


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