第3話  野花のリスティナ

 雨は大分小雨になってまいりました。

 トボトボとヴィトレテークのお屋敷まで、一刻は歩いたかしら。

 あたくしはついに、力尽きましたわ。もうしゃがんで動けなくなりました。


「どうしたの!?カミーユ」


「あたくし、もう動けませんわ。アラン、屋敷に帰って迎えを寄越しなさい」


「ええ!?僕一人で帰るの!?」


 アランは非常に嫌そうでしたけど、あたくしが大通り沿いの噴水の前で、座り込みを決めましたら渋々言いましたわ。


「この件で、カミーユに連れ出されたってい言っちゃうよ!」


「好きにしなさい。あたくしの空腹も満たせない貧乏人が!」


 思い切りの皮肉を込めて言ってやりました。

 そうしたら、アランは泣きそうな声で、


「僕だって、好きで貧乏な訳じゃい……あっ!!」


 と、叫んであたくしにイキナリ、タックルをしてきました。


「??」


 あたくしは訳が分からずに、濡れた地面に転がっていましたわ。


「良かった~~こんな所にリスティナが咲いてるなんて……」


 はい??

 リスティナとは野に咲く花のことでしょうに!

 まぁ、薄紫色の小さな花が愛らしいと、庶民の中には生まれた女の子にリスティナと名付ける親も多いと聞きますが。


「気を付けてよ、カミーユ。リスティナはもう、あまり見れない花なんだぜ」


「野草でしょう!?そんなの根っこが頑丈で根絶やしにになんてならないですわよ。」


「もの知らずだね!リスティナは、薬効が素晴らしく良いって乱獲されて、今は貴重な花なのに」


「それより早く行きなさいな!!あたくしをどれだけ飢えさせるつもりなの!!」


 アランはズボンのポケットに根っこから抜き取ったリスティナの花をハンカチで包むと大事そうに持って走って行きましたわ。


 それから半刻ほどで、屋敷から迎えの馬車が来ました。

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