第2話 空腹に耐えられなかった伯爵令嬢
「ねえ、僕たち何時まで此処にいの?」
アランが聞いてきましたわ。
「あたくしたちは、駆け落ちをしてきたのですよ。家出をしてきたのです。帰れるわけがないでしょう」
そう言うと、アランは大層驚いたようで、薄い色の茶髪を振り乱して泣き出してしまいました。
「僕、お父様にもお母様にももう会えないの!」
「あたくしと結婚するのよ。これ以上の幸福はありませんわ」
「結婚!?カミーユと!」
とても素っ頓狂な声で、驚きますものですから、思い切りアランの足を踏んずけてやりましたわ。
「それで?何時になったらこの屋敷に入れますの?あたくしはとてもお腹がすきましたわ。早く、お風呂に入って暖まって、鶏のクリーム煮が食べたいですわ」
「カミーユ……この家には誰もいないよ。僕の家は貧乏だから、お父様とお母様がアルテアに働きに行ってるんだよ。
だから、僕がカミーユのお家に預けられているんじゃないか 」
泣きじゃくりながら、アランが言いますの。
アランの言葉にガ--ン!!でしたわ。
貧乏ですって!?アランの家が貧乏ですって!?
あたくしはこの時、初めて知りました。
アランの家は、貴族だからお金があると思っていましたわ。
「では、この屋敷には入れないのですの?」
「うん」
よくよく見てみれば、屋敷の門には頑丈な鎖で閉じてありました。
あたくしは大きく溜息をつきました。
そして、もう一度アランに言いましたの。
「アラン。あたくし、お腹がすきましたわ」
あたくしより背の低いアランのために、わざわざ膝を折って。言いましたわ。
アランは茶水晶の瞳をパチクリさせて、言いましたわ。
「うん、僕もだよ。だから、帰ろうよ。カミーユ」
ああ……ダメですわ……
アランではないのですわ……
あたくしをこんなに空腹にさせるなんて……
小雨が本降りになってきた頃に、あたくしはアランに言いましたわ。
「帰りますわよ」
と言って、その場を離れましたわ。
アランは嬉しそうに後をついてきましたわ。
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