創作物の、独り言

CHOPI

創作物の、独り言

「ごめんなさい。どうしてもあなたの事を愛することが出来ないの」

 お母さんは私にそう言いました。

 そうして家を出て行ったきり、帰ってくることはありませんでした。

 私は生まれたその日から今まで、ずーっと独りぼっちだったのだと気が付きました。

 あぁ、お母さん。なんで私の事を産んだんですか。

 私は産んで欲しいです、と頼んだ覚えは無いのです。


 私はずっと独りで、何も知らぬまま大きくなりました。


 ある時、私は不思議な人に出会いました。

「ボクはキミのこと、とても好きだと思うんだ」

 好き、ってなんでしょう。

 またある時、別の人が私に言いました。

「ワタシはアナタのこと、嫌いだわ」

 嫌い、ってなんでしょう。

 他にも少しずつ、たくさんの事を言われるようになりました。


「ここは好きだけど、ここは嫌い」

「ここはアナタの良いところよね」

「アナタのことを認めたくないな」

「アナタの全部が大好きだよ」


 私の事を否定する人もたくさんいるし、肯定する人もたくさんいることを学んでいきました。そしてそれはどうしたって避けられないことで、だけど私にはどうすることも出来ませんでした。


 だけど、気が付いたんです。


 いつも独りだった私は、お母さんに捨てられてしまった私は。それでもちゃんと拾ってくれて、私の事を見つけてくれて。言葉を貰えることだけでも嬉しい事なのに、あろうことか「大好き」とまで言ってくれる人たちにも出会うことが出来ました。


 例えお母さんに愛されていなくても。産まれてきたことが間違いだったとしても。それでもこうやって、自分の足で歩くことが出来るくらいには、大きくなれたんです。


 だから、お母さん。一つだけ言いたいです。

 私はお母さんにも「アナタの事が大好き」って言って欲しかったのです。

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