第12話 これが私の初恋
高校2年の6月上旬。
今日はまだ梅雨明けも宣言されていないのに快晴で、夏の訪れを予感させてくれる心地よい日。
今一人で学校の保健室に居るんだけど、窓から入ってくる風が、私の黒く長い髪を揺らしている。
いやー本当、気持ちのいい日だね~。
……だと言うのに、私の心は沈み切っている。
「……また告白かぁ……どうやって断ろう……」
今日のお昼休み、購買に行ってたら少しだけ喋った事のある、3年生の先輩に声を掛けられたんだぁ。
今日の17時、グラウンド横の倉庫で俺の気持ちを聞いて欲しいってさ。
そして現在15時半。
まだもう少し時間があるね……
……これで2年になって10回目くらいかなぁ……
私は自分で言うのもあれだけど、男子からよく告白を受ける。
恋ってものがイマイチ分からなくて、お受けした事は無いんだけど。
自分を客観的に見た時、私は女子の中でもかなり発育が良いし、容姿も優れてる方だと思う。
調子に乗ってるとかじゃなくて、今までそういう扱いをされてきたから、自分ではそうなのかなって思うだけだよ?
美人は得をするってやつ。正直めちゃめちゃ覚えがある。
勉強だってクラス──いや学年でトップなんだけど……
普通そこまで来たら近付きづらくない?
事実、私は女子の中でもやや敬遠されてるし。
あ、仲の良い友達は1人だけだけどちゃんと居るからね。
その子はサバサバした子でさ、人の目とか気にしないから私と仲良くしてくれてるんだとおもう。
その子には告白をされる度に、「いっそテキトーに彼氏作っちゃえば?それで告白は減るでしょ」って言われてる。
確かに効率の良いやり方だと思うよ!?
でも初彼氏をそんなテキトーに作りたくないの!!
私だって乙女なんだよ~!何でも初めては大事にしたいのっ!!
って、やばいよ!うだうだ考えてたら時間が無くなっちゃうよ!!
私がベッドの上で「にゃふぅぅぅ~……」と頭を抱えていると、保健室のドアがガラガラガラと音を立てて開かれた。
「!」
思わずベッドのシーツに隠れちゃった。
……こんな所見られるの恥ずかしいもん。
入って来た誰かが「すみませーん」と保健室全体に響くよう声を張った。
今は保健室の先生も居ないんだよね……
もう少し考える時間が欲しかったけど、しゃーないか──
「君、どうしたの~?」
「!」
ベッドを降りて声の方を見ると、見るからに中学生と言った風貌の男の子だったので、フランクに話し掛けてみた。
どうやら向こうは、学生が出てくるとは思って無かったようで、少し驚かせちゃったみたい。
お化けでも見たような顔をしている。そんなにびっくりしなくても……
……てかこの子、結構可愛い顔してるね。若干なよっとしてるかな?
うん、ちょっと目に掛かる前髪とかパッとしないけど、お姉さんは割と良いと思うぞ少年!
「……あの、今学校説明会で来てたんですけど鼻血が止まらなくて……」
ティッシュで鼻を押さえながら半目で私を見つめている彼。
……なんだろう。この子を見てると妙に
「説明会でどんなえっちな事考えてたの~?イケナイ子だねぇ~」
ちょっとニヤニヤしながらイジってあげた。
すると彼は眉を寄せて半目を更に険しくさせた。
「あの、そういうのいいんで先生呼んでくれないっすか」
な、中身は可愛くない子だね!?
私初対面の人にこんなうざそうな顔されたの初めてだよ。
い、いやまぁ鼻血で苦しんでるのに茶化した私が悪いんだけど……
私は若干顔を引きつらせながらも、彼をベッドに案内した。
「ご、ごめんね……今先生どこに居るか分かんないしこっちで寝ときなよ」
「……どうも」
段々顔色の悪くなってきた彼を、さっきまで私が使っていたベッドに案内する。
「……あの、何ですか?」
横になった彼をぼ~っと眺めていると、怪訝な反応が返ってきた。
呼び出された時間まで後1時間ちょい。
一人で考えてもどうせいつも通り断って終わりだろう。
なら一期一会。この出会いに感謝を込めて──
私はこの子とお話して時間を潰す事にした。
「君、この高校受験するの?」
「……一応そのつもりですけど……」
「なら来年、先輩後輩だね!」
「……今から呼んであげましょうか?先輩って」
ほう……先輩……
いい響きじゃないですか。
「うむ!そうしたまえ後輩君!」
「……普通こういう時って名前を教え合うもんじゃないですか?」
「え、だって聞いても来年には忘れてるだろうし……」
「ひ、ひっでぇな……」
し、しまった。つい本音が。
だぁって興味無い事に脳の容量使っても仕方ないし……
来年、この子に好かれて告白されても困るしね。
今までもそういう事はあった。
怪しい芽は早い内に摘んでおかないと。
でもちょっとかわいそうだったかな。
私は謝罪と同時に気になっていた事を訊ねてみた。
「ごめんごめん。それで後輩君、なんでそんなに鼻血を……?」
「先輩に話すような事じゃないですよ。それより先輩はどうしてここに?もう放課後でしょ?」
後輩君は鼻血が止まり出したのか、鼻を押さえる力を弱めた。
おかげで少し話しやすくなったみたい。
生意気にも私の質問には答えず、質問を返してきなすった。
「それこそ君には関係無い事だよ。なに、気になるの~?相談乗ってくれるなら話しちゃおっかなぁ~」
すこーし冷たく言い放ったんだけど、後輩君は怯まず言い返してきた。
「先輩が乗って欲しいなら。一応診てもらったお礼も兼ねて」
「お礼って……私特に何もしてないけど……」
「……体調が悪い時、誰かが一緒に居てくれるだけでも楽になるもんでしょ」
「……あ……」
この子……父さんと同じ言葉を……
初対面なのに何故か気を許してしまいそうになる。
……いけない。こんなのよくある言葉じゃん。
でももうあんまり時間も無いし、相談しちゃおっかな。
──何か期待してしまう。
父さんと同じように、私の心を変えてくれるような何かを。
私は後輩君に告白をされて困っている事を言ってみた。
「──で、困ってるの。いや~モテる女は辛いよねぇ~」
「うわぁ……うぜぇ……」
嘘でしょこの子。
初対面だよ私達。
うざったく言った自覚はあるけどさ、遠慮とかないの!?
……ま、まぁいいや。
「それで……どうしたらいいと思う?」
「そうですね……」
後輩君は幾ばくか悩んだ後、気だるげに言った。
「先輩、彼氏がいるって事にしたら良いんじゃないですか?」
「あー……やっぱそーいう感じかぁ……」
「ご不満ですか?好きな人程度だったら弱いだろうと思ったんですけど」
「ご不満じゃあないんだけどねぇ……」
君には少し期待してしまったから、余計に残念な感じを出してしまった。
それに気付いたのか、後輩君はまた少し考え出した。
そして何か閃いたのか、レイ○ン先生よろしく人差し指をピン、と伸ばした。
「先輩、彼氏が駄目なら極度のファザコンって事にしましょう!」
「…………はい?」
「実の父親を愛してるから貴方の告白は受け入れられません──これですよ!!そしてこれが広まれば皆からドン引きされて告白も減りますよ!!」
なに名案でしょうみたいな顔してるのこの子。
失うものが多すぎるでしょ!
「……あ、あのさ……それって効力あるのかな……?」
「……肉親にそういう気持ちを向けたり向けられたりするのって、キッツいもんですよ。周りが知ったら絶対引きますよ」
「……そ、そういうものなんだ……」
あまり変わらない口調で言ってるように見えるけど、若干暗い顔をしている。
……何かあったのかな。
少し聞いてみようかと思ったけど、その前に後輩君が固まっている私の顔を覗き込んだ。
「……これも駄目そうですか?」
「そ、そうだねぇ……でも父さんの事は大好きだから、悪くない作戦だとは思うよ」
私の言葉に後輩君が少し驚いたような顔をした。そんなに変だったかな。
「……実の父親を愛してるんですか?」
少し、父さんとの思い出を回想する。
……うん。やっぱり私は──
「──愛してるよ」
家族として、の筈だけどね。
すると私の顔をずっと見ていた後輩君が「……あっ」と顔を近付けた。
「……先輩……涙が……」
「あ、あれ……」
父さんが死んじゃったのはもう随分前。
とっくにお別れは済ませたし、心残りもほとんど無い。
でも後輩君が父さんの事を思い出させるから……
ふふっ……本当に不思議な子……
「ごめん、大丈夫気にしないで」
「……何かすみません」
「ううん!そだ、後輩君こそ両親の事好きじゃないの?」
私の何気ない質問に、後輩君はまた少し顔を暗くした。
それでも視線を外す事なく彼は答えてくれた。
「……好き、でしたよ。家族として。でもお袋は違ったみたいで──って、初対面の人に何言ってるんだろ俺。すみません忘れて下さい」
「後輩君……」
それ以上は聞かなかった。聞けなかった。
傷付いている彼に、これ以上過去を思い出させたくなかった。
何でだろう……この子を放っておけない──
「ちょ、先輩っ!?」
保健室の開け放した窓から優しい風が流れ込む。
気が付くと、私はベッドで寝ている後輩君を抱き締めていた。
「せ、先輩……?」
「……静かに」
「は、はい……」
私達は少しの間無言で抱き合った。
「……」
「……」
最初は後輩君を癒してあげたかった。
傷付いている彼に少しでも味方が居るよって伝えたかったの。
だけど、徐々に私の心には別の気持ちが溢れ始めていた──
抱き締めてくれた時、いつも右手で頭を、左手で私の腰を優しく撫でてくれた父さんを思い出す。
まさか後輩君が同じように抱き締め返してくるとは……
──あぁ……懐かしいなぁ……
「先輩……泣いてるんですか?」
「……泣いてないよ」
「肩、冷たいんですけど?」
「……む」
……意地悪。
後輩君が嫌だったら離れよう。
そう思って体を浮かせた時だった。
「……先輩、ありがとうございます」
「……え……?」
後輩は私を抱き締める力を強くして、離れる事を許さなかった。
──ドクン。
僅かに心臓が跳ねたのを感じる。
「もうとっくに消化出来てる筈なんですけどね。先輩のおかげでまた少し心が楽になりました」
お互い、何があったのかは一切口にしなかった。
抱き合ってるだけで満たされていたから。
「私も……君のおかげで凄く温かい気持ちになれた」
「俺達、初対面なのに本当何やってるんですかね」
「そう思うなら離しなよ~」
「いいんですか?」
「……もうちょっとだけ」
「分かりました」
少し意地悪で生意気な後輩君は、私の心をえらく掻き乱してくれた。
いつかお返ししてやるんだから。
……いつか。
来年この子が来るまでもう会えないのか。
私、なに寂しいとか思ってるんだろ。
恋なんて私にはよく分からないんじゃなかったの。
告白を断るのも恋が分からないから──
「あっ!!告白っ!!!」
せっかく後輩君と抱き合っていたのに、気が付くやガバッと離れてしまった。
……せっかくだって。本当どうしちゃったんだろ私。
後輩君もいきなり私が離れたのを見て、告白の事を思い出してくれたみたい。
「……そう言えばそうでしたね。時間はあとどれくらいなんですか?」
「あ、あと5分……」
「急ぎましょうか」
「え?」
い、いやなにベッドを降りようとしてるの。
まさか付いてくるつもり?
「ほら、早く案内して下さいよ」
「待って、案内してどうするつもり……?」
「……別にどうもしませんよ。面白そうだから先輩の行く末を見たいだけです」
「……それはそれで嫌なんでけど……」
「早く行きましょーよー」
「……わ、分かった」
後輩君はどうやら完全に鼻血が止まったらしく、すっかり顔色が良くなっている。
……元気になったから冷やかしに来るつもりかな?
うん、意地悪なこの子ならあり得る。
ま、いっか。
相談したのは自分なんだし、この子には見届ける権利、あると思う。
「よし、後輩君こっちだよ!」
「え、ちょ、引っ張らないで下さい!」
タダで見せてやるのも癪だ。
せめてもっとドキドキさせてやろう。
そう思って後輩君と手を繋いで駆け出した。
でもこれは失敗だったんだ。
ドキドキしたのは私の方だったから──
※
まだ明るい17時のグラウンド横の倉庫。
目の前にはサッカー部の先輩。
……そして倉庫の隅には同じ部活の仲間であろうギャラリーがちらほら。
うーーー……これじゃあっちもこっちも公開処刑だよぉ。
なんせ私は今から、極度のファザコンという属性を手に入れるからね。
結局私は後輩君の案を受け入れた。
頭の悪いやり方だけど、せっかくあの子が提案してくれたもん。
そうそう後輩君もサッカー部とは反対側の隅に隠れてるよ。
少しちらっと見てみると、心なしかニヤニヤしてるように見える。
……あんにゃろーめ……覚えてなさいよぉ……
さて、私に想いを伝えようとしているサッカー部の先輩は、頬を赤くしていよいよ告白に入ろうとしている。
「は、花園。来てくれてありがとう、いきなりでごめんな」
「……い、いえ……あのそれで……」
「あ、あぁ、俺の気持ちを伝えたいって言ったやんか。あのさ……俺──」
……あー……来る……
後輩君との時とは違う嫌なドキドキが胸を支配する。
だけど、先輩が続きを口にしようとした時だった。
「──あー先輩、さっきぶりですねぇ~今度は直接アタックっすか?きっしょ~~~」
なに、してるの……後輩君……!?
いきなり私の横にやって来た彼は、サッカー部の先輩を煽るように手を振っている。
「お、お前さっきの……!!」
え、この二人知り合いなの!?
混乱する私を他所に話を続けている。
「いやぁ驚きですよ。盗撮犯がまさか盗撮相手に告白だなんて!」
「……やかましい。また殴られたいんか?」
「いやーもう勘弁ですよ~。まぁでもそんな事されたらこのスマホで良くない事が出来ちゃいそうですわ~。先輩ぃ~ロックは掛けといた方が良いですよ???」
「なっ!?お前いつの間に……!?」
ま、待ってこの二人何を話してるの……?
盗撮……?殴る……?
まさか──
「ちょ、後輩君。君が保健室に来たのって先輩とケンカしたから……?」
「いやケンカじゃないですよ。一方的に一発殴られただけで」
「な、なんでそんな事……!?」
「今はそれより──」
後輩君は私の耳元で「後で謝ります」と小さく囁いた。
そして私の右手を優しく握って、ギャラリー達にも聞こえる大声を出した。
「よく聞け!!誰も先輩に手を出そうとするな!!この人は俺の大事な彼女だっ!!!」
『!?』
そう言った後、後輩君は右手に持っていたスマホを先輩に投げつけた。
「ほら、スマホは返してやるから二度とこの人に近付くなよ!!あんたが盗撮している所、誰にも知られたくないだろ?じゃあな!!」
「なっ!?」
「あーそうそうさっきサッカー部の顧問を呼んどいたから、付いて来ない方がいいぞ!」
後輩君は私の右手を握ったまま校舎に向かって走り出した。
後ろから先輩の怒声が聞こえる──
「待たんかい!!お前これパスワード掛かってるやんけ!!!」
「1万通り試せば開くさ頑張れ!ハッハッハ!!」
「この中坊がぁぁああーーーー!!!」
先輩の声を背に、私は後輩君に引っ張られて彼の後ろ姿を見つめながら走る。
あー……やっばいよぉ……さっきから胸のドキドキが止まんない。
……全く、こんな事してどうなっても知らないんだからね。
※
「すみませんでしたっ!!!」
校門を抜けて、学校から最寄りの駅前。
私の目の前で後輩君が腰から頭を下げている。
「謝らないでよ。助かったって」
「……そうですか?先輩、俺の案が気に入らなさそうだったんでこうするしかなくて……」
まぁ確かにあのファザコン案はどうかと思うけど。
結局後輩君は彼氏案を採用したんだね。
それも自分を彼氏に……
ぷっ……
「ハハハ!君、本当バカでしょ!!」
「……やり過ぎたとは思ってますよ」
「初対面の私に無茶し過ぎなんだって!嬉しかったけどさ!」
「え?嬉しかったんですか?」
「うん。だって後輩君が彼氏なんでしょ?それならまぁ良いかなって」
「い、いやそれは今だけ──」
私は続きを言おうとした後輩君の唇に人差し指を押し当てた。
「すぐ別れたら変でしょ?
「へ……それってまさか……」
「お姉さん、察しが良い子は好きだぞ~」
そして私は先程の後輩君の真似をして、耳元に唇を近付けた。
「──責任、取ってね♡」
「いやいやいやいや!?」
「……何よ~夏休みが始まるまでで良いんだよ?夏休みになって自然消滅しました~でいけるからさ」
後輩君は少し悩んだ後、半目で私の顔を見た。
「……まぁそれなら」
「決まりだねっ!君、お家はどこなの?」
「歩いてすぐそこですけど……」
「じゃあ中学も私の高校の近くだよね?なら毎朝ここで待ち合わせね!」
「へ?」
「だ、か、ら。一緒に登校するよって。急に察し悪くならないでよ」
「えぇぇ……」
なんでそんなに嫌そうなのよーーー。
ま、嫌だって言ってももう遅いけどね!
私もう君を手離すつもりがないみたいでさ。
恋っていうのがなんなのか、まだ分からないけど……
恋をするなら、恋に落ちるなら、君がいい。
父さんと似た雰囲気を持つ君が。
私の為に頑張ってくれる君がね。
そう思っちゃったんだ。
この気持ちを恋と呼ぶならそれでいいや。
──ふふっ、これが私の初恋かぁ。
「先輩、なにニヤニヤしてるんですか……」
「してないよぉ~。あ、そうだ。連絡先交換しとこーよ!」
「……夏休みが始まるまで必要か……分かりました」
「ちょっと~なんで嫌々なんだよぉ~」
私が後輩君が表示したQRコードを読み取って友達追加をする。
その時表示された名前を見て、妙な胸騒ぎがした。
「君、大倉って名字なんだ……?」
「え?えぇ。大倉夏焼です。それがなにか?」
大倉……それってお母さんが付き合っている男の人と同じ名字じゃ……
い、いやそんな珍しい名字じゃない。
偶然だよね。
「う、ううん!私は花園冬美!よろしくね夏焼君!」
「よろしくお願いします
「……やっぱ嫌いだ君なんか」
ここは君も冬美先輩とか、冬美さんとか、冬美……とか呼ぶべきでしょ!
せっかく私から勇気を出して名前を呼んだのにぃ。
「じゃあ先輩、俺そろそろ帰るんで」
「あ、待ってよ!」
私は背を向けて歩き出そうとした夏焼君に後ろから抱き付いた。
「せ、先輩!?」
「胸当たってる?」
「わ、分かりませんよ!!」
「これからこうやっていーっぱいドキドキさせてあげるんだから。覚悟しときなよ~!」
「勘弁してくれ……」
ひとしきり抱き締めて満足したので、夏焼君の匂いが残ってる内に、私も駅のホームに向かう事にした。
「よっし。それじゃまた連絡するよ彼氏クン」
「……分かりましたよ俺の大事な彼女さん」
──こうして私達の両親が再婚するまでの半年間、私と夏君は先輩と後輩として仲を深めていった。
始めの1ヶ月はカップルとしてね♡
この半年の間で、私がどんどん夏君を好きになっていってしまうのは言わなくても分かるよね。
そして、
凄く複雑な気持ちだった。
一緒に暮らせて嬉しい気持ちと、どう頑張っても恋人にはなれない悲しさ。
どうにかしたくて私は家を出た。
今にして思えば、そうしなければ夏君は事故には遭わなかったのかも知れない。
私はもう決めてる。
夏君が守ってくれたこの命で、私は夏君の記憶と向き合うんだ。
何度も私を守ってくれた愛しい彼の為に。
──もうすぐ夢が醒める。
【作者からのお知らせ】
なろうにて連載中の『今年5歳になる愛娘が家出JKを拾ってきたが、飼うことは出来ないので通い妻にしてみた。』もカクヨムにて更新を始めたので、ご興味があればぜひよろしくお願い致しますm(_ _)m
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