第1話 誰にも内緒の関係の始まりだね
「判決を言い渡す」
「はい……」
「死刑」
「減刑を求めても宜しいでしょうか……」
「なら家を出ていけ」
「恩情に感謝致します……」
8月1日の午後8時20分。
京都某所にある我が家にて、判決が出た。
俺、
「夏焼、最後に一つ聞いておきたい事がある」
「な、何でしょうか……」
「お前、
「も、勿論であります!」
冬美──俺は
彼女は俺の義理の姉に当たる人だ。
2年前、俺の父親が再婚して出来た義理の姉妹の姉の方。
しかし親父……冬姉との仲まで怪しむとは……
だがどうやら、それには理由があったみたいだ。
続く親父の発言が教えてくれた。
「大学進学と共に家を出た冬美ちゃんだが、女の子一人では心配なのもある。だが一先ず
姉妹の妹の方、それが美亜。
……俺が童貞を卒業した相手だ。
しかし、どうして冬姉の家で暮らす事になるんだ!?
こう言っちゃなんだが、義理とは言え妹に手を出した男に下す処分とは思えない。
「……冬姉の家……?なんで……!?」
「分かってるな?冬美ちゃんにまで手を出せば──」
「だ、出す訳ねぇだろ!!」
「……1ミリも信用の無い事をよくもまぁ自信満々に叫べたな」
「申し訳ございません……」
「ほらさっさと家を出る準備をしてこい!!」
「はいぃぃ!!」
※
かくして俺は大倉家を追い出され、現在冬姉のアパートの玄関前に、少ないながらも荷物を持って立っている。
日時は8月2日の午前8時頃。
実家と冬姉の家とは、徒歩込みの電車で20分程。
実はここ、俺は一度訪れた事がある。
冬姉達が俺達と暮らすようになるまで住んでいた場所なのだ。4年程らしいがな。
少し寂れた感じがあるが、赴きがあって落ち着いた印象のあるアパート。
「ハハ……これから禁断の義理の姉との同居生活ってか……?なんてエロゲーだよこれ……」
一体どうしてこうなったんだ……
そもそも美亜に手を出したのが間違──いやそれを言うなら、親父が再婚なんかするから……
──違うか。
継母である
親父も、厳しいがいい親だと思う。
二人の結婚は、俺も素直に嬉しかったし、そんな二人を悲しませて本当に申し訳ない。
何かを間違えたのは俺なんだ。
絶対手を出しちゃいけない相手なのに、誘われたからって、美亜を止められなかった俺が悪い。
もう親父と琴美さんを悲しませない為にも、冬姉とは何事も無く、高校を卒業してやる!!
──俺はそう固く決意し、インターホンを鳴らした。
『はーい!』
「あ、冬姉俺だ。夏焼だ」
『ん!ちょっと待ってね!』
部屋の奥から廊下に足が擦れる音が聞こえる。
防音面は少し不安だなぁ。
そんな風に思った時、ドアが開かれ約3ヶ月振りに冬姉と対面した──
「やぁ!義理の妹に手を出して家を追い出されたド畜生の我が
「やめろ!!ご近所さんに聞こえるだろうが!?」
再会早々とんでもない事を口走りやがって!?
「え?事実じゃん?私の可愛い美亜ちゃんと大人の階段登っちゃってこのこの~」
「冬姉まずは家に入れてくれーー!」
俺の懇願が届いたのか、ふざけて笑っていた冬姉は、ようやくからかうのを止めて、家に招いてくれた。
「はいはい、ほら。荷物持ってあげるよ」
「……さんきゅ」
俺は靴を揃えて脱ぎ、廊下を通りリビングへと迎え入れられた。
そして可愛い猫が刺繍されたカーペットの上に正座で座る。
小さなテーブルを挟み、冬姉も差し向かいに鎮座した。
彼女は大学に入ってから、長い髪の毛を薄い金髪にし、益々その美貌に磨きを掛けている。
今まで多くの男子を虜にしたであろう、少し強めの眼差しを持つキレイ系の美人である彼女は、豊満な胸を携え、正しくパーフェクトな女性だ。
……部屋着はゆるゆるのTシャツにジャージで、案外ダサいのが少し可愛い……ギャップ萌えも抑えてからに。ホントパーフェクト。
「さてと……それじゃあこれから共同生活を送る上で、二人だけのルールを作ってあるから、まずはこれを読んで」
「わ、分かった」
冬姉が俺に手渡したのは、一枚のプリントだった。
そこに書かれていたのは──
「えーなになに……?"1つ、炊事洗濯等家事は全部冬姉に任せる事。2つ、その代わりに夏君は私のお願いを全て聞く事"……ナニコレ」
「ちょっと、まだ3つ目が残ってるでしょ!」
「あ、本当だ。"3つ、この共同生活で起こった出来事は誰にも言わない事"……いや意味が分からないんだけど……」
要約するとこうだ、身の回りの世話は全てしてやるから、冬姉の言う事は絶対。更に他言無用と。
……なんだこのルール。
とにかく俺は冬姉の説明を待つことにした。
「見たまんまなんだけどねぇ。このルールを守れないなら、夏君をここに住まわせる事は出来ないよ」
「い、いや1と3はまだ理解は出来るけどさ……2のお願いがどういう類いのお願いなのかで変わってくるって言うか……」
冬姉は俺の言葉に、妖しく微笑んだ。
「……教えて欲しい……?」
「あ、あぁ……」
「なら、こっちおいで」
自分の太ももをポンポン、と叩いた冬姉。
え、なにもしかして膝枕をしろと……?
……よく分からないが、俺はテーブルを周り、冬姉と膝が突き合う距離にまで近付いた。
「な、なぁ冬姉どういう──」
「えいっ」
「!?」
一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
俺の唇に、何か柔らかい感触がある。
目の前には目蓋を閉じている冬姉の顔。
──キス……!?
「……んっ……夏君ちょ~っと潤いが足りてないねぇ」
「ななな……何で……!?」
「私からのお願い事1つ目、毎朝こうしてキスして私を起こす事。異論反論一切許しません──」
冬姉は俺とのキスの味を楽しみながら、唇を嘗めた後、頬を赤らめて目を細めた。
「──返事は?」
「は、はい!」
「よろしい。誰にも内緒の関係の始まりだね夏君♡」
俺の固い決意は、1日も経たずに瓦解したのだった──
※
8月2日の朝8時頃。
「お
あたしは大倉美亜。
義理とは言え兄で処女を喪失した近親相姦上等な女の子。
こう見えてもお姉ちゃん譲りのスタイルで、茶色に近い黒髪をポニーテールに纏めてる。
お兄ちゃんに相応しい女になる為に、お洒落にも気を遣ってるんだよ!
そして、そんなあたしは只今絶賛激おこ中なのだ!
理由は明白で、大好きなお兄ちゃんを勝手に、お姉ちゃんの家へと追い出されたからだ。
何であたしがお兄ちゃんの追放を止められ無かったのか……
それは昨日お姉ちゃんに、「お泊まりしにおいでー♡」と言われたから。
お兄ちゃんとの関係がバレて親と気まずいあたしは、何にも怪しむ事無く、お姉ちゃんちに行っちゃった……
あれは罠だったんだ……!
今日からお兄ちゃんがお姉ちゃんちで暮らすというのを、今朝お姉ちゃんから聞かされて、慌てて帰って来たんだよ!
……お姉ちゃんにも「夏君来るからそろそろ出てってね♡」って言われたし。ホント許すまじだよ!
「言ったじゃん!お兄ちゃんがあたしを襲ったんじゃなくって、あたしから誘ったんだって!!」
「美亜ちゃん、とにかく落ち着いて──」
「これが落ち着いて居られるかー!!お母さん!お兄ちゃんを、お姉ちゃんの家にやったんでしょ!?」
「え、えぇ……何かまずかったかしら……?」
あたしのお母さんはのほほんとした人だ。
あの姉の恐ろしい一面を知らないから、お兄ちゃんをお姉ちゃんの家に出せたんだ。
「問題大有りだっての……!」
「み、美亜ちゃん私達の気持ちも分かってくれ。とにかく直ぐに何とかしないと、と思って。……再婚して仲睦まじい君達を喜んでいたら、まさか……」
「うっ……」
それを言われると困っちゃうよ。
……あ、あたしだって本当は最後までするつもりは無かったのに……
でもお兄ちゃんの凄く大きくて、気持ち良かっ──
こほん。
とにかく、今すぐお兄ちゃんを連れ戻さないと大変な事になる。
「二人に心配を掛けたのは申し訳ないよ……でもねあたしは本気でお兄ちゃんが好きなの。だからお姉ちゃんに取られたくないの。分かった?」
「え……と、取られるってどういう意味だい……?」
「ま、まさか冬美も──」
あたしはこくん、と頷いた。
「二人はお姉ちゃんが言ったから、お兄ちゃんをお姉ちゃんの所にやったんだよね……?」
「あ、あぁ……」
「つまりね、二人は騙されたんだよ!!お姉ちゃんはお兄ちゃんとの子供を作るつもりだよ!!!」
『えぇ!?!?』
あたしは邪魔してやるからねお姉ちゃん。
絶対お兄ちゃんは渡さない。
だってお兄ちゃんは、初めてありのままのあたしを受け入れてくれた人なんだから──
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